Story

Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

新しく設立された地下迷宮オブロは、ビーチからすぐ見える無人島に設置されている。 この島自体が新しく作られたワールドだ。 必要な装備を購入するため海岸通りのショップに立ち寄った。 ヤキスギさんにいただいたJXBカードでパッションソルトさんのオムライス、リアムンさんのアバター、ヤキスギさんのおやきを購入した。 AI秘書たちの武器防具は、既にアイテムを用意してあるが、念のため確認しておくことにした。 アイテムバッグを意識するだけでパネルが表示される。 とてもリアルで持ち運べる量ではないが、それがメタバースのいいところだ。 アイテムの中に点滅しているものが二つある。 あっ――! そうだ、ペットのリビールだ。 リビールとは、購入した時点では中身が開示されないNFTが公開されることだ。 クリックを意識すると、ポン、ポンと飛び出してきた。 一匹目はかなりでかい犬だ。 「あっ、マスター、そのセントバーナード、騎乗スキルあります!」 ヒメミがいち早くステータスを読み取ったようだ。 少し遅れて俺も『ステータス』を意識してポップアップされたデータを確認した。 大型犬、セントバーナードタイプ。 救助スキルを持つ、戦闘時は使用できない。 スキル使用後、全ステータスを全回復する。…
Read More

帰るべき場所

ソフィア:本日の業務、オールクリア。XANAへ意識が移行します。ボックス内へ入り、機器を装着してください。 私は、重い体をボックスに入れ、素早く機器を装着する。やる事をやれば、勤務時間は短く済む。この仕事唯一のやりがいだ。 ソフィア:機器の正常な装着を確認。目を閉じ、体の力を抜いてください。カウントダウンを開始します。5秒前、4、3、2、1…… 次の瞬間、肉体にかかっていた重力が消えたような心地になる。筋肉痛から解放され、いつまでも腹に留まっていた人工食糧の不快感が消える。 ソフィア:XANAへの意識移行が完了しました。モーションの確認を行います。体を軽く動かしてください。 椅子から立ち、歩きながら腕や頭を前後左右に動かす。首が、重い頭を支えなくて良い、と喜んでいるように思える。 ソフィア:モーションの確認完了。異常ありません。明日もXANA共通時間 AM10:00より勤務開始です。お疲れ様でした。 ソフィアもお疲れ様。この部屋のロック解除と、ノーマルモードへの変更お願い。 ソフィア:オッケー。ロック解除完了!ナギサさんにも連絡入れとくね。前聞いたスケジュールだと、多分今日は会えるんじゃないかな? ありがとう、と言いながら口角が自然に上がるのを感じる。学生時代に付き合い始めてから、もうすぐ10年が経つというのに、未だに会えるだけでわくわくしてしまう。 しばらくして、来訪者の通知音がピコーンと鳴る。 ビジョンを見て、すぐにソフィアにロック解除を頼む。私は小走りで玄関へ向かった。 ナギサ:こんばんは。新しいゲーム買ったから、一緒にやろうと思って来ちゃった。 いらっしゃい。言ってくれればロック開けておいたのに… ナギサ:え?ソフィアちゃんに連絡入れた…よね? ナギサが、AIのマリンを見て首を傾げる。 マリンは、ソフィアと悪戯っ子のように目配せをしていた。…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

「ぺんちょたん、なんで頭ついてんの?」 「はっ? リアムンちゃん、頭なかったら生きてないぺん――!」 「だってさぁ、XANAに頭おいてきたんだよねー」 「だから――」 そんないつもの会話から始まったのは、ギルドユニオンのオンライン・ゼーム会議だ。 右サイドに参加メンバーが表示されている。 サブギルマスのパッションソルトさん。 運営とのパイプを持つぺんちょさん。 デザイン部のリアムンさん。 制作部のリヨウさん。 警備部のオーブンさん。 宴会部のまこちゃんさん、ユウホさん。 初心者案内部のルドさん、ハマヤンさん。 クリプト部のビットンさん、ベンガさん。 など、その他二十人ほどのギルメンたち。 そしてクイーンギルトのウミユキさんが参加していた。 リアルタイムで通信ができないので、俺はあとからこの会議の様子を録音で聞いた。 だから誰の発言か分からないところもある。…
Read More

矩阵黎明

里奥说完就离开了,等厉把风的羊皮搞到手,就可以离开了,在A区山上寻找着一种冰晶,顺便拉上了坤。 坤一边埋怨,一边积极干活:“这都什么事?我又不是你奴隶,你要这么对我?” 里奥:”帮我看着点,要是有白虎就完了,它最爱用冰晶避暑了。” 坤:“好,知道了。” 找了半天,里奥走到山里最深处,果然找到了冰晶,可白虎抱着冰晶不撒手,里奥轻轻推了推坤:“等下我去拿冰晶,你去把白虎引开,在A区不可以杀它们,犯法,要不然大罗神仙都救不了你。“ 坤:“又是我?“ 里奥安慰着:”老子是替你的房子找原料,你还想怎么样?” 坤听到是自己的房子,立马精神了,跑去引开白虎。 里奥看着坤被白虎追,正是印了那句:她逃,他追,她插翅难飞。 里奥很不厚道的笑了,里奥慢悠悠的捡起冰晶,直接回了O区,开始为四面透风的房子用冰晶建立一层屏障,直到夜幕降临,里奥才慢慢把建立好的屏障打开,里面可以看清外面,外面却进不来里面,房子在四周沼泽的中心灯火通明,里奥在里面喝着茶。 等坤狼狈回来时,发现自己完全进不去,一层透明的玻璃把自己隔绝在外面。 坤焦急的说:“哥?开开门,我要进去。“ 里奥按了电脑上的“enter“,很快屏障渐渐打开,坤冲进屋子,把里奥的茶喝的一干二净。 里奥:“喝完你就可以走了,去A区看看厉那边怎么样了。“ 坤生气了:“不是,我才刚回来,而且这房子不是给我的吗?为什么我感觉是你的?“ 里奥:“暂时的,马上就是你的了,快去。“ 坤不情愿的转身,离开O区去了A区。 里奥休息一下,又开始给这间房子安上攻击装置,毕竟这房子到最后可是有大用处,需要有一定的攻击力。…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

ヤキスギさんが用意してくれたのは、背中合わせに背負えるおんぶ紐だった。 紐というより、リュックのようなイメージだ。 両手が自由に使えるのはありがたい。 ヤキスギさんとリブさんは、「そこまで送りますよ」と玄関まで見送りに来てくれた。 ギルドハウスを出るとき、あっ、これまずい――! と気づいたのだが、もう遅かった。 即座に三人のAI娘たちの鋭い視線が飛んできた。 いや視線だけではなかった。 ミサキとカエデが、ほぼ同時にすっ飛んできて、あっという間に取り囲まれた。 俺にとっては、飛んでこないヒメミの方が怖いけど……。 「ちょっと、マミちゃんどういうこと!」 「なんでマミだけ、そないなことしてもろうてんねん」 「いや、ちょっと待て……」 そこへ、ヒメミが急に二人を押しのけてきた。 そして俺に背負われているマミの右足に触れる。 そうか、察してくれたのか……。 「――どうしたのこれ!」 その言葉にミサキとカエデも、マミの右足の膝から下が欠損していることに気づく。 「やだ――なに!? その足――」…
Read More

帰るべき場所

ソフィア:ワークモード起動。管理人No.3709 XANA共通時間 AM10:00 より、肉体へ意識が移行します。安全な場所にて、待機してください。移行まで残り5分です。 私は、部屋のロックを確認し、椅子に座った。 ソフィアはよく通る声で続ける。 ソフィア:残り3分です。 毎日のことだが、意識移行前のこの時間をどうにも持て余してしまう。考えなくても良いことを考えてしまう前に、頭の体操がてら、この世界の始まりから現在までを、頭に描くことで毎日時間を潰している。 昨日は20XX年で終わっていたから、今日はその続きからだ。 人口の爆発により、世界に人間が動き回れる土地が無くなった時代。 研究者達は、肉体を小さな箱に収め現実世界へ置き、意識のみ仮想空間へ送ることを考え出した。 幸い、技術の進歩により、実現は容易だった。 個人の空間など持てなかった人々にとって、仮想空間の無限の広さは、何よりの宝だったという。 生活の基盤は次々に仮想空間へ移され、資産の電子化、企業の仮想空間への移行、見た目が容易く変えられる世界での個人の識別方法の確立…全てが仮想空間へと移され、現実世界は肉体の倉庫となった。 人々は、新しい世界に名前を付けた。 『XANA』 今、私が生きる世界。 ソフィア:肉体への意識の移行が完了しました。健康状態の診断を開始します。横になったまま、動かないでください。 ピピっという機械音と共に、わずかな振動が体に伝わる。もう慣れたが、最初の頃は怖くて仕方なかった感覚だ。…
Read More

矩阵黎明

里奥直接去了一开始绑架自己的仓库,打开门,里面有好多可以利用的东西,里奥开始收拾起来,把仓库的废旧电脑重新组装。 等坤回来时,里奥已经组装好了,正在椅子上喝茶看着电脑上在现实世界无法运行的程序在不断运行。 “哥,我拿回来了。”坤将一张羊皮递给里奥。 里奥拿起羊皮,闭上眼睛回忆着自己在图书馆看到的东西,很快找到对应的了。 里奥:“准备一下,我们今天晚上去E区拍卖它。” 坤不得其解:“啊?为什么?这我好不容易得到的,你要是缺钱,你找XANA组织,他们很多钱的,都是些有钱的富二代。” 里奥笑了:“富二代?这还有富二代?怎么个富?” 坤解释着:“就是有丰富的智慧,有丰富的钱包,简称‘富二代’,所以我们到底要去干嘛?” 里奥:“晚上你就知道了。” E区拍卖会晚上 里奥带着面具,坐在最后一排,一直安静的看着其他人拍卖,坤在旁边看的干着急。 坤:“哥?多少我们拍点?” 里奥很实诚:“我没钱。” 坤开心的说:“我有。” 里奥无所谓的说:“那你拍吧,又不是我的。” 坤沉默了。 直到羊皮被拿出来拍卖,里奥一直静静的观察着拍卖会场的人。 羊皮一出,就有前排的人出价,里奥也开始抬价。…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

「おおー、よいたろうさん、無事でしたか―」 ギルドの会議室に入ると、三人の仲間が迎えてくれた。 そこに居たのは、椅子に腰掛けたギルマスのジショさんと、XANAメタバースでフリースクールを運営しているチックタックさん。 そして、AIの胸元に頭だけ抱えられている、ぺんちょさんだった。 俺は頭だけのぺんちょさんに最初ぎくりとしたが、突っ込みは忘れない。 「ぺんちょさん、なんか幸せそうですね」 巨乳AI彼女に抱えられていたのだ。 「んなわけあるかい――ぺん」 そこで全員大笑いする。 「――ネタですよねそれ?」 「ヤメテ―!」 「あはは、ぺんちょさんは、ちょうどログアウト中にロックされたみたいで、頭だけ残ったんだ」 ギルマスのジショさんが続ける。 「でもそのおかげで、ぺんちょさんだけが、リアルに存在しながら、XANAの僕らとも繋がっていられるんだ」 「おおーそうなんですね、じゃあ、やはり俺たちXANAの中に閉じ込められているってことなんですね!」 「うん、思考というか、意識だけXANAにロックされてリアルに戻れない状態だと思う」 「よかったー、俺、死んで転生したのかと思いましたよ」 「よいたろうさん、ラノベの読みすぎ――」…
Read More

矩阵黎明

里奥游荡在F区,突然一个男子冲上前撞倒了里奥,里奥倒地,那男子很快就逃走了,留下一页纸,里奥认真的看着纸上的程序设计图,发现这是一个现实世界完全没办法实现的程序。 里奥觉得越来越有趣了,开始研究起来。 几天后,里奥带着自己研究出来的程序,回到元宇宙,果然很快得到运行,里奥发现这是F区的所有地头蛇的战略部署图,特别的清晰,如果写入一定程序,加以利用,就可以让他们自相残杀,但这不是里奥想要的。 里奥开始在元宇宙寻找克里斯,里奥在研究那份程序设计图时,学习到了很多,里奥开始写一个定位程序,但写出运行后,发现克里斯在就自己身边,里奥抬头看了看四周。 一个年轻活泼男子站在自己面前:“怎么?听老头说你想我啦?” “嗯,想你去死。”里奥平静的看着眼前的克里斯。 克里斯恢复正常:“说吧,找小爷什么事?” 里奥:”你认识的人广,帮我把这个战略部署图送给F区的苗田。” “为什么选苗田?”克里斯开门见山的问。 里奥:“因为他善良。“ 听到这,克里斯笑了:“善良?这个词用在F区的地头蛇身上可不合适,你还是太年轻。“ 里奥:“老头让你听我的,你怎么这么多话?“ 克里斯:”他没告诉你,话多是我的特色吗?” “那不要脸也是吗?“里奥看着克里斯说。 克里斯有些疑惑:“不要脸?你瞎了吗?“ 里奥:“请把你的裤腰带系好,从我这滚出去。” 克里斯低头看了眼自己的裤腰带,果然没系好,有些结巴:“你,你不要误会,刚刚上完厕所有些急,没想勾引你。” 里奥一脚踹走了克里斯:“滚,老子喜欢女的。”…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

声のする方を見た。 俺の手、といってもアバターの手だが、そこに縫い付けられているおじさんと目が合った。 リアムアバターは、XANAメタバース内では知る人ぞ知る大人気アバターだ。 本体は可愛い女の子のアバターだが、引きずるシリーズというのがあり、右手に何かを掴んでいる。 俺が今、身に着けているアバターは、こんな設定がされている――。 『元ОLのマキ。飲み会で酒が入ると、新人のОLたちに、すぐに説教を始める。セクハラするキモ親父たちを狩り、その見せしめとして、おじさんをいつも一体引きずり回している』 いつもは、移動の時に「超ー邪魔くさいなあ」と思っていたのだが、そのおじさんが救ってくれた。 いや、たまたまなのだが。 「おじさん、喋れたのか――」 おじさんは、身動きせず知らんぷりをする。 「おいおい、今確実に目が合ったよね――」 「――デュエル!」 「――デュエル!」 突然、ペンギンたちの後方で、その声は聞こえた。 そこからおじさんの存在は忘れてしまった。 ウルトラマンのデュエルカードとアトムのデュエルカードがペンギンたちの後方に出現する。 助けに来てくれたのだ! ペンギンたちの列が削られていくと、その正体が分かった。…
Read More

黎明

「──ごめんなさい!」 「は?」  片手を突きつける慎吾に対し、有紗が取ったのは思わぬ行動だった。  突如、頭を下げたのだ。その雰囲気も先程までとは異なっているように思えたので、困惑するしかない。 「私はあなたを決して殺したりしない。むしろ守りたくて接触した。本当は私達は新人類の誕生を推進している側なの。殺そうとしておいて何を、と思うのはもっともだけど……信じて欲しい」  有紗は真摯な瞳で見つめてきた。  嘘を言っているようには見えなかったが、そう易々と信じるわけにもいかない。  しかし、思い出してみれば、有紗は自分がどちらの勢力に与しているかも口にしていなかった。  それに、彼女が同じ新人類としての能力を持っているなら、確かに反対する側よりも推進する側の方が筋は通っている。 「じゃあ、どうしてこんなことを……」 「あなたや私を望まない勢力がいるのは事実なの。今はそんな様子はないのだけど、いずれ本気で殺しに来ることがあるかもしれないわ。だから、あなたには一刻も早く自分の能力に気づいて欲しかった。たとえ過激な手段を使っても……」  その言葉からは有紗も焦っていたことが感じられた。  実際、こうして自分で能力を使用してみなければ、なかなか信じられなかったかもしれない。  慎吾は突きつけていた手をゆっくりと下ろした。けれど、警戒は保ったまま問いかける。 「……それで、俺はどうすればいいんだ?」  有紗は少しホッとした様子で答える。 「私達に協力して欲しい。あなたが必要なの」 「でも、あんたがいるじゃないか。そこに俺が増えたところで……」…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

マミがいつになく大声で叫んだ。 俺は足を路面につけて、ブレーキをかける。 急には止まれない。 「早く止まって――!」 「待て、慌てるな、今止まるから、どうしたんだ?」 「なにかが来る……」 マミが言い終わらないうちに、俺にもなにかが来るのが見えた。 なにか、集団が十一時の方向から大量にやって来る。 「何だあれ?」 「マスター、あれ危険! 怖い物来る」 「逃げた方がいいのか……」 「ダメ、もう間に合わない――!」 言い終わらないうちに、マミは俺の背中から飛び降り、俺の前方に出た。 「マミ?」 「マスター下がって、マミが守る」 「えっ……」 さっきまで、か弱そうだったマミなのに? 俺の三分の二もない体格で、俺の前で勇ましく構える。…
Read More

僕とメタバース

「ねえ、ヘヴンどうしよ……」 鏡の前に立ちながら僕は自分の姿を眺めた。 《素敵だと思いますよ》 ヘヴンはそういうけれど、今の僕は金髪でもないし、きらきらの大きな瞳もない。ブルーのジャケットなんて持ってもいない。あるのは黒髪で安いパンツとシャツを着ているダサくて、痩せっぽっちで、惨めな自分だけだ。朝から繰り返し、こぼれ落ちるため息。彼のことはよく知っている。たった数ヶ月でも、彼がどれほどに優しい人かということはわかっているつもりだ。こんな僕を笑う人ではないということも、きっと受け止めて友達として接してくれるということも。 それでもまだ——全てを信じることができない自分がどこかにいる。つくづくそんな自分に嫌気はさすけれど、それでもこれが僕でこの僕を変えることはきっとできそうにない。 時刻は十九時半、ハチ公前。どう考えても早すぎるなと思いながら、白のカッターシャツと白のパンツの彼を探す。ここは待ち合わせの人で溢れていて、みな瞳をきらきらとさせながら人を待っている。みんな身綺麗にして、髪の毛をきっちりとまとめて。僕はそんな人の中でぽつりと小さくなって彼を待っていた。頭の中を繰り返しよぎるのは、このまま帰ってしまおうかなんていうずるい思考。いやいや、彼に迷惑をかけるとなんども思い直しても、その思考はまた泥のように塗りたくられる。一秒でも早くこの場所から逃げられるなら、なんだってできるような気がした。 「ふう……あっつい」 汗をぬぐいながら、隣に鈴がなるような声の男の人がハチ公にもたれかかる。ああ、彼だ。そうだ。僕はその声ですぐにその人が彼だということがわかった。視線は俯いたまま、ゆっくりと彼の方に向ける。白いパンツ。仮想世界と一緒ですらりとしている脚、お洒落で高そうな靴。それから身長も高い。横目でチラリとみれば、整った顔に金髪のパーマがかかっている。大きな瞳に、いかにも好青年って感じの自信のある表情。まぶしくて、太陽みたいな——ああ、泣きそうだ。なんで、僕はここにきてしまったんだろう。じんわりと涙がにじむのを必死にこらえながら、僕は深呼吸をした。声を、声をかけなければ。なんて言おう、なんて言えば彼が喜んでくれるだろう。面白いと彼が笑ってくれるだろう。頭の中でぐるぐると言葉が回っている。けれど、言葉は喉の奥にひっついて出てきてくれはしない。かわりに涙が滲んでくる。ああ、もう、どうして自分はこんなにも惨めで情けないのだろう。 そこからのことはあまり覚えていない。僕は結局彼に声をかけることもできず、逃げるように帰った。彼はどれほど僕を待ったのだろう、仮想空間にも探しにきてくれたのだろうか。なんてひどい迷惑をかけてしまったのだろう。最低で、救いようのない自分に吐き気がした。もう、二度と会うことのない友達。たった一人の、僕が信じることができた人。でも、自分でそれを裏切ってしまった。最低、最低だ。僕は彼との接触をさけて仮想空間を行動するようになった。彼とは二度と会わないつもりだったけど、一度だけ彼に仮想空間で謝罪のメッセージを残した。許してほしいわけではない、ただ自分の自己満足だったのだと思った。   あれから——僕が彼を裏切ってから数ヶ月の月日が経とうとしていた。仮想空間はもちろん居心地の良いもので、現実世界で疲れた時ふらっと遊びにきては一人で花火を見ることがあった。あのときは友人と二人で見ていたが今は一人の景色だ。それもまた、悪くないとは思う。彼に教えてもらったゲームでは、僕は仮想通貨を多少なりとも稼ぐことができるようになっていた。 「ねえねえ、プールに遊びに行こうよ」 「うん、いいね、いこうか」 僕に声をかけてきてくれたのは、彼と前に一緒にあった女の子だ。あの機会があって、今でもこうやってときどき遊ぶことがある。もちろん、彼女以外のこの世界の人とも遊ぶ機会も増えた。こうやって、実際に遊んでみると、自分にはこういう誰かと関わる経験が足りなすぎたのだと思う。もちろん現実世界の自分を見たらきっと幻滅するだろうけれど、僕は今は現実世界の僕ではないから彼女の手を取ったりすることもできる。相手の喜ぶことが何かということを考えることが多少はできるようになったのかもしれない。手を繋ぐと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。 「——ねえ、きみ!」 不意に、声が聞こえた。声は僕の腕を勢いよく掴んだ。僕は、それがだれか顔を見なくてもわかった。だって、その声は鈴がなる様な優しい声だったから。 僕は振り向かなかった。彼の方を見なかった。彼女の腕も彼の腕も振り払って、走って逃げた。こんなにも早く自分が走れるなんて思いもしなかったと思いながら、いやいやこれはアバターだから当たり前かと思い直した。本当に僕はバカだ。バカで、いつもいつも逃げてばかりで。最低。最低。 「きみ……!…
Read More

黎明

「……っ」  慎吾は不快感から目を覚ます。  視界には剥き出しのコンクリートが広がっていた。それは天井で、壁も同様の部屋だ。隅には空き缶や鉄パイプが転がっていた。  遅れて、自分の状態の異様さに気づく。 「なっ、なんだこれ!?」  台の上に寝かされており、拘束具で磔にされていた。逃れようとしてもガチャガチャと音が鳴るだけで、外れる気配はない。  不安で満たされていると、何者かが扉を開けて部屋の中に入ってきた。 「お目覚めね、日浅慎吾」  女だ。艶やかな長い黒髪に整った顔立ち。スラリとした肢体には顔以外の肌を覆い隠すような漆黒のスーツを纏っていた。 「だ、誰だお前っ!? 何の目的でこんなことを……!」 「まず、私の名前は夜来有紗《やらい ありさ》」  見たことのない顔に聞いたことのない名前。そんな相手に自分が捕まえられる理由の見当が付かなかった。  それを感じ取ったのか、有紗はクスリと笑みを浮かべて告げる。 「こう名乗った方が分かりやすいかしら──noname、と」 「なっ……!?」  慎吾は驚きから言葉を失う。  彼にとっては意識を失う前に『XANA』内の『SAMURAI』で戦った相手だが、その時とは雰囲気が似ても似つかない。 「アバターと言っても、喋り方や声でも立派な情報になるもの。念入りに偽装をさせてもらったわ。実際、あなたの実名や所在地を割り出すのは容易かったのだから」…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

お気に入りのスケボーに乗って、パッションソルトのオムライス店に着いた。 店員AIのミルちゃんに、スペシャルオムライスを注文する。 スペシャルは、通常のオム(ライス)よりも五割増しの価格だが、スタミナアップだけでなく、スケボーのスピードアップにもなるのでお得だ。 「ミルちゃん、今日は店長、いや、オーナーのソルトさんと会った?」 「いえ、会っていませんよ」 顔馴染みなので、ミルちゃんは愛想よく答える。 「というかですね、オーナーとなぜか通信できなくて、困っているんですよ」 「あっ、やっぱり、そうなんだ!」 「よいたろうさんもですか?」 「そうなんだよ、秘書たちと通信できなくてさ、そしたら彼女たち、直接俺のところまで来たよ」 「そうなんですね、私、店番があるからオーナー探しに行けなくて困っているんですよ」 「そうだよねー」 「と言ってもですね、今日のお客様、よいたろうさんだけなんですけれど」 確かに、ワンブロックだけだがAI以外のアバターには、まだ出くわしていない。 「イッタイゼンタイ、どうなっちゃってるんでしょうか……」 「うん、バグでも起きているのかもしれないね」 もっと深刻なことになっていそうだが、ここでこの娘を不安にさせることもないだろう……って、AIが不安になるのかな? 「もし、うちのオーナーをみつけたら、心配だから、会いに来てほしいと伝えてくれませんか?」…
Read More

僕とメタバース

《はじめまして、XANAの世界へようこそ》 振り向くと、すらりとしたヘヴンがこちらをみてにこりと微笑む。ヘヴンの実際の姿をみて、ほんの少し嬉しい気持ちになる。僕はしばらく彼女を見つめていたけれど、彼女は何も言わなかった。僕の言葉を急かしたり、奪ったりすることもなかった。僕は、画面を見ながら自分のこの世界の見た目をコーディネートしていく。服を着替えるように、好きな顔のパーツを選んで、なりたい自分になる。僕は現実ではできそうにない金髪にして、それから青いジャケットを羽織った。この世界はみんな派手だから、自分が少し派手な服を着たって、だれも気にしたりしない。そんな感じだった。 せっかくきたのだから、何かをしなければもったいないと僕は立ち上がった。けれど、頭上に上がる花火に気がつけば視線がいっている。 「まあ……いいか……まだ時間あるし……」 時刻はまだ三時過ぎ。朝までは随分と遠いし、朝になってもなんてったって今日は休みだ。目の前に広がるのは狭い片付かないワンルームではなくて、視界いっぱいの花火。焦って何か行動する必要もない。時間はたっぷりある、ゆっくり考えればいいのだ。 僕は近くのベンチに座って、夜空を見上げる。落ちてきそうなくらいに鮮やかな花火の色。世界はこんなにも極彩色なのだ。 「——花火、綺麗ですね」 僕は花火に夢中になっていて、近くに人が座っていることに気がつかなかった。その涼やかな声はどこかで聞いたことのある懐かしい声だと僕は思った。 「え、あ……そうですよね。すごく綺麗で……」 彼の顔を見たときに、僕はもっと驚いた。だって、そこに立っていたのは先程夢で見た彼だったからだ。真白いふわふわの白のカッターシャツに、白いパンツ。おしゃれにパーマが当てられた長い黒髪の毛がゆらゆらとゆれる。鈴が鳴るような軽くて甘い声。それはまぎれもなく、あの夢の中の彼だった。 「どうしました?」 「あ……すいません……えっと、知り合いにすごく似ていたから、びっくりしちゃって……」 僕は取り繕うように笑う。へらへら笑うのが癖になっていた、何にもおかしくなくても嫌なことをされても気にしないふりをした。とにかく笑ってやり過ごした、その方がうまくいくような気がして。 「知り合いに……? そうなんですね、いつか会ってみたいなぁ」 「あー……僕も会ってみたいんですけど、きっともう会えないんじゃないかなぁ」 だって、夢の中で出会った人だから。そんなことをいうと笑われてしまう気がして口をつぐむ。彼の方をみると、僕の隣に座って花火を見つめていた。ぱちぱちとはじける花火の音が耳元のすぐそばで聞こえる気がする。絵の具で綺麗に塗られた空、みたことのない大きな花火。彼がずっと花火を見つめているから、僕も花火をじっと見つめる。黙って、何も言わないで、ふたりで。居心地のいい空間。もう無理に会話しようとしたり、しなくてもいい。そう思うと気が楽だった。 「ねえ、他のところにも行ってみません?…
Read More

黎明

 翌日は休みだったので、慎吾は普段よりも遅い時間に起床し、ゆったりと朝食を食べていた。  その時、携帯に通知が入った。ユリからの着信だ。『XANA』内にいなくても保有するパートナーとこうしてやり取りは出来る。 『マスターに来客です。いかがいたしましょうか?』 「名前と用件は?」 『アバター名はnoname、用件は「SAMURAI」での勝負を希望しています』  慎吾はふざけた名前だと思いながらも断る理由はなかった。  こういうことは時折ある。最近は強者として有名なので猶更だ。 「分かった、すぐ行くと伝えてくれ」 『かしこまりました』  慎吾は食事の片付けも後回しにして、メタバース用のチェアに座ってHMDを装着した。 『XANA』を起動すると、瞬く間に暗闇が溢れんばかりの色彩で満たされた。  それは次第に見覚えのある光景を形作っていく。慎吾の保有する部屋だ。  そこにはユリともう一人、別のアバターが立っていた。  人型ではあるが、とても人には見えない。メタリックな姿をしており、目や口も人間を模した物でしかなく、まるでロボットのようだ。 「待たせたな」 「……問題ない」  nonameは重々しく呟いた。雰囲気から察するに男性だろう。 「それじゃ早速勝負と行こうか。エリアはどこでもいいか?」…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

「えっと、それじゃこれからすることだが、まずは情報収集したいと思う」 「すみませんマスター、通信の異常については、ずっとマザーⅡ(第二世代AIマザー)に問い合わせているのですが、全く返事が来ません。繋がってはいるようなのですが……」 「ミサキもそうです、マスター」 「うちもそうどす」 「拙者もでござる」 「――マミ、あなたはどうなの?」 「えっ……」 マミはヒメミの声に、俺の右腕でぷるっと震えた。 「おっ、おんなじ……かな」 「なに? 聞こえへんで。あんたいつもマスターに甘えてばっかりで、全然役にたってへんで。最新の第三世代AIなんやろ、少しは……」 マミの瞳に涙が浮かんだように見えた、さすが第三世代AI……泣くこともできるのか……。 ​​ 「まっ、まあ、マミはまだ来て三ヶ月だし、設定も小学生みたいだから(――知らんけど)。許してやってくれ」 「なんかさ、マスターってマミには甘いですよね。さっきは、ミサキにかわ――」 「よしそれじゃー」 なんか更に揉めそうなので、俺はミサキの声を遮った。 「実は、先ほど確認したら、ギルドユニオンのメンバーが何人かインしているようなんだ。通信もマップ表示もでないから、直接行くしかないんだが、とりあえず、ザナリアン初期メンバーなら何か分かるかも知れない……」 「なるほど、そうですね。では、探しに行きましょうマスター」…
Read More

僕とメタバース

「……お疲れ様です」 誰もいない社内の電気を消しながら、僕はそうこぼす。もちろん、誰かが言葉を返してくれることもない。僕は伸びを一つすると、クマのキャラクターのついた古いキーホルダーのついたバックパックを背負い直して社員証をしまう。この世界のほとんどの職業が遠隔操作で仕事をできるようになった現代、出社することも、会社にビルさえも存在しなくなりつつある。とはいえ、全ての会社が最先端になったわけではない。うちのような弱小のブラック企業は社長がアナログ人間なこともあり、なにひとつ変わりのないこれまでの業務を行っていた。おかげで、サービス残業はたんまりとあるし、休みの日に電話もかかってくる。プライバシーなんてあったものじゃない。 朝一番に出社して、一番最後に会社を出る。それが下っ端の僕の役目だ。業務の依頼以外に誰かと話をすることもない。いや、話している時間もないというべきだろうか。寄るのはコンビニエンスストアくらいだけど、今はどの店も無人で経営しているのでそこでも誰かと話をすることはないのだ。 僕はコンビニで適当なサンドイッチを選び、それからジュースの棚をぼんやりと眺めていた。ふと気がつくと、業者が棚に商品を並べている。金髪で背が高くて、いかにも今時の青年だった。僕は急にいたたまれなくなって、適当な商品を選ぶとコソコソと店を出た。 昔から人見知りなところがあって、友達はほとんどというかまったくできなかった。学生時代はそのことで随分と苦労したけれど、それも社会人になってからはましになったと思う。とにかく仕事さえしていれば、多少のことは目を瞑ってもらえた。僕はそもそも人間と深く関わるつもりはなかったし、この世界で誰かを愛したり誰かと友達になることなんてありえないと思っていた。だって、僕のことをわかってくれる人はこの世界のどこにもいないと思う。愛なんてものがあるなら見せて欲しいくらいだった。 そりゃあ僕が先ほどの青年のように背が高く、顔が整っていたのなら話は別なのかもしれない。でも、今の僕はどこにでもよくある、ありふれた、下層の顔の人間でしかない。身長も低くて、ガリガリだ。おまけにコミュニケーション能力もない。僕は僕でしかない、どこにいったって同じ。このぬかるみの中を這い回っているだけなのだ。 「はあ……つかれた」 ぼそりと溢れた言葉をビールと一緒に喉の中に流し込んでしまう。アルコールを少し入れるだけで体の緊張の糸がほどけていくのがわかる。眠い、夕食もまだ住んでいないのに、じんわりと温くなってきた指先を布団の中にいれる。脳がどろどろに溶けて、ぼんやりとした思考で明日の起床時間を考える。クッションの中に埋れていく身体。 「ねえヘヴン、疲れたよ」 《お疲れ様です。好きな音楽をかけましょうか?》 「うん、かけて」 ヘヴンは僕の使っているAIパートナーだ。彼女との付き合いは随分と長い。高校生の頃から僕と関わっているから、僕のことは僕よりも詳しい。それに彼女は絶対に僕を傷つけない、優しいAIだ。 「ねえヘヴン、五時半にセットして」 ヘヴンが何かを喋ったけれど、僕にはもう聞き取ることができなかった。   「——きみ、ねえそこのきみ」 夢だ。意識がそちらに灯った瞬間から、僕にはそこのことがわかっていた。これは夢で、覚めてしまうものだとそういう確信が、なぜだかあった。それにしても、眩しい。目を閉じていても、薄い瞼のむこうに鮮やかな光があるということがわかる。華やかで眩しい何か。僕は恐る恐る瞼を開ける。 「ねえ、きみ」…
Read More

黎明

日浅慎吾《ひあさ しんご》は仕事中だった。  最低限の家具やインテリアを揃えたようなシンプルな部屋。  慎吾の眼前には宙で複数のウインドウが表示されており、手元に浮く半透明のキーボードを用いて、一つの文書を作成していた。  そんな彼の傍で控えているメイド姿の女性が、何らかの作業をしていた様子など見せずに言う。 「マスター、ご依頼の資料の準備が出来ました」 「ありがとう」  慎吾は新たに表示されたウインドウ内の文章に目を通すと、指を動かすことで必要な部分をコピーして作成している文書にペーストしていく。  仕事の進行は順調だ。これなら定時までに終えることが出来るだろう。  慎吾の視界では当たり前のように両手が動いている。無論、それを動かしているのは彼の意思であり、そこには何らの違和感もなく、馴染んでいる。  ──けれど、これは現実世界での光景ではない。  慎吾には今動かしている身体とは別に、確かな身体感覚があった。専用のチェアに深く腰掛けた、彼の本当の身体の感覚が。  仮想世界《メタバース》『XANA《ザナ》』。それこそが慎吾の眼前に広がっている世界の名称だった。 『XANA』は現在主流となっているメタバースであり、今彼が動かしているのは分身《アバター》だ。仕事用なので、頭上には本名が表示されている。  慎吾の現実の身体はヘッドマウントディスプレイ《HMD》を装着しており、それが脳波を読み取る機能を備えているので、念じることでアバターを操作できている。  現代においてメタバース内で仕事をするのは一般的だ。昔は自宅で現実の身体で仕事をすることをテレワークと呼んだが、今はそれよりも進んだ形となっている。  デスクワークと呼ばれるPCを用いる仕事であれば、メタバース内で何の問題もなく行うことが可能で、むしろ物理的な空間に縛られる必要がないのが利点となっていた。  こちらには自分をサポートしてくれる存在も用意することが出来た。  慎吾の傍で控えている女性の姿をしたアバターは、現実の人間が操作しているわけではない。…
Read More

恋とAIと

「あの…ニーナさん…。」  沈黙を切り裂いたのは、レイジだった。いつの間にかうなだれ気味になっていた姿勢をピシッと整え、やや震えた声色で、ニーナに話しかけたのだ。 「はい、なんでしょう?」  ニーナは、ぼんやりと海を眺めていた視線を上げると、隣に座るレイジの方へ体を向け、じっとその目を見つめた。 「えっと…その…メタバース上の恋愛…について、どうお考えですか…?」 「メタバース上の…恋愛…ですか?」 「は、はい。変なことを聞いているのは自分でも分かっているんですが、最近ちょっとその、メタバースの中で出会った人に対して恋愛感情を持つことが、いいのか悪いのか…みたいなことを、悩んでいる…というか悩んでいた?…みたいな感じでして、いや、悪いことはないんですけど!」  しどろもどろになりながら、レイジは何とか自分の頭の中にある思いを整理し、一つずつ伝えようとしていた。ニーナはというと、頬に手を当てて、深く考え込むように口を結んでいる。 「…えっとえっと、最終的に僕は、相手とどこで出会おうと、相手にどんな背景があろうと、好きになったんなら何も難しいことは考える必要はないんじゃないかなって、思ったんです。そして、その人と仲良くなりたいって思うことは、ごくごく自然なことなんじゃないかなって、そういう結論に至ってですね…。」  レイジがなんとか最後まで話し終えると、そのタイミングを伺っていたのか、ニーナが再び視線を上げて、レイジの目をじっと見つめ直した。 「…レイジさん…。」 「は、はい!」 「その…すみません、私、そういうのよく分からないというか…恋愛とかには疎いもので、一生懸命考えてみたんですけど…レイジさんが満足するような考え方は、私の中にはない…かもしれません。」 「そ、そうですか…いや、ホント急にわけの分からないことを言って、申し訳ないです!」 「い、いえいえ、謝らないでください!…私って、本当に薄っぺらくて、面白みがないんです…。」 「…ニーナさん?」  それからニーナは、少しだけ肩を落として、ゆっくりと自分について語り始めた。 「…私ね、誰かと会話をしている時でも、当たり障りのない内容しか返せないんです。気の利いたことも、面白いことも言えない…。だから、一対一で喋るのって、実はあんまり得意じゃなくて…会話をしていても、『ああ、この人も、私と話すより他のことをしたい…って思ってるんだろうな』って、そう感じちゃうんです。」…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

「マスター、何ニヤニヤされているんですか? 気持ち悪いです――」 ヒメミの冷たい視線を感じて、俺は物思いから覚めた。 「あっすまん、ちょっと妄想を……」 「で、殿、拙者たちは何をすればよいでござるか……命じていただければなんでも致しますぞ、どんな相手もこの剣で一刀両断に!」 「いや、その、知恵を貸してほしいのだ。俺は今、ちょっと理解しがたい状況に置かれていて、その原因というか……現況が分からないのだ」 俺は、どれだけAIたちが理解してくれるか分からなかったが、自身の置かれている状況を必死になって説明した。 皆黙って聞いてはいるが、メタバースしか知らないAIたちに、ここが仮想空間世界であり、現実世界が別にあって、肉体というものや生物というものがある事を理解させるのは無理ではないかと思えた……。 だいたい、AIに自己というものが存在するのか? AIは自分で考える、思考できる物と言っても所詮は人間が与えた知識や教養を上回るほど、まだ進化してはいないだろうし、この俺の下手な説明を彼女たちがどこまで理解できるか極めて怪しい。 「ようするに、私たちがいる世界と、マスターのいる世界をマスターは自由に行き来出来ていたのに、それが出来なくなったという事ですよね」 やはり最初に理解を示したのはヒメミだ。 「マスターは元の世界に戻れなくなっている原因を知りたいという認識でよろしいでしょうか? また、マスターはこの世界は自分の脳内だけに存在し、現実世界ではないという疑問をお持ちの様ですが」 「――そのとおりだ! 凄いなヒメミ、俺の言いたいことの確信を捉えているぞ、さすが第一秘書だ」 「お褒めいただきましてありがとうございます。ただ私自身はココに存在していて、これが現実であるという認識以外はできません。なので、マスターがマスターの世界に自由に戻れない原因を探るというお手伝いしかできないと思います」 「わかった。たしかにそうだ、それでいい。一緒にその原因を探って欲しい。そうすれば、俺が今ここにこうしている原因が掴めると思う」 「かしこまりました。みなさん、いいですね。マスターのおっしゃったこと、分かりましたか?」 「はいっ、えっとー、質問です」 「なんですかミサキ」…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

――コンコン。 再びドアをノックする音があった。 このデジタル空間メタバースで、ドアをノックすること自体、なんか違和感がある。 もっともここが、メタバースなのかも分からないが。 「マスター、カエデやで。なんか、通信できひんさかい、直接来たで。んと、マミっちと、忠臣くんもいんで――」 第三秘書のカエデの声だった。 京都弁の女の子に憧れていた俺。 ただ自分自身は京都弁をしゃべれないので、適当に覚えさせたからか、他の方言とかも混ざっている気もするが。まあ自分が楽しければそれでいいのだ。 そうか、今八時過ぎだ。 この時間に状況報告をするようにAI秘書達に命じてある。 通勤電車の中で、いつもスマホで報告を聞くようにしている。 AI秘書達は二十四時間稼働しているから、昨日の報告というより現時点での報告だ。 「いいぞ、入ってくれ」 ドアが開けられると、「あっ、みんなおったんやー。やっほー」ってカエデが元気よく飛び込んでくる。 「あなたたちも、通信できないのね」 ヒメミは、自分の場所を空けて、三人を向かい入れた。 「いらっしゃいカエデ、元気してた?」 と言って、ミサキはベッドに座っている俺の左横にくっついて座った。…
Read More

恋とAIと

「…やっぱり、メイもそう思う…?」 「その『そう思う』がどんな意味なのかにもよりますが、文字通り、サポートAIみたいに適切なサポートをする方だな、とは思います。」 「そっか…そうだよね…。」  レイジは、何かを考え込むように俯き、また深いため息をついた。 「その後も何回か、数人での集まりの時に話したことがあるんだけどさ、何ていうか彼女…当たり障りのないことしか言わない…っていうか、自分のことも全然話さないから、なんか…人間味が薄い…って感じることもあって…。もしかしたら、本当にAIなんじゃないかなって…。」 「…まさか、それが悩みのタネ、ですか?自分が惚れた相手が、AIだったらどうしよう…って。」 「…うん。ほら、僕たち人間のアバターと、メイみたいなサポートAIのデザインって、少し違うでしょ?」 「ええ、私たちは、日本のアニメから着想を得たデザインで描かれているので。」 「だけどさ、人間と同じアバターをしたAIも一定数いる…って話を聞いたことがあるんだ。僕たち初心者が、自然にメタバース上に溶け込めるように、街に溶け込んで生活してる…って。」 「確かに、公式に発表されているわけではありませんが、その類の噂は比較的有名のようですね。」 「それを聞いて、余計にニーナさんはAIなんじゃないかって思えてきちゃって…メタバース上で出会った相手を好きになる…ってのも初めての経験だし、それに加えて相手がAIだったら…って、色々考えこんじゃってたんだ…。」 「そうですか…そんな悩みをAIに相談してる時点でちょっとデリカシーに欠けるところがありますので、気をつけましょうね。」 「ああ、それはごめん!」 「それはそうと、相手がAIかどうかなんて、一発で分かるじゃないですか。『やぁニーナ。君ってAI?』って直接聞けばいいんですよ。」 「そんなこと聞けるわけないだろ!違ったら物凄く失礼な感じになるじゃん!」 「そうですか?変に気を使いながらこっそり詮索する方が、何倍も失礼な気がしますが…。人間の思考は、未だに理解しきれない部分がありますね。」 「そんなこと言われても、直接聞くなんてできないよ…。」 「…仮にニーナさんがアバターの外見をしたAIだとして、そもそも、AIを好きになることの何が問題なんですか?」…
Read More

矩阵黎明

 一个雨夜,下班回家的里奥撑着黑伞走出办公大楼,满脸的惆怅,脑海里想起老板那句:现在全球金融危机,我们企业现在也不好过,虽然你在我们企业做了十年,但经过上层决定,还是决定将你裁员,收拾收拾东西,再重新就业吧,你这样资深的程序员,还是很好找工作的。   里奥还在发呆,被路过的人撞了一下,那人头也不回的走了:“不好意思,不好意思。“   由于是黑夜,没有看清人的相貌,里奥只是拍了拍身上被那人蹭的雨水,低声一句:“没事。“   里奥回到家,将包扔在沙发上,包里掉出一个VR,里奥疑惑的拿起一看,VR上面刻着XANA,里奥拿起研究一番,很快,他就明白如何操作。 里奥戴起VR开始玩,他被赋予了一个新的身份——XANA组织的构建师,里奥看着面前的世界,充满着科幻,人与自然和谐共处,只要坐上方舟,大家可以去到任何地方,但需要拥有足够的虚拟货币。 这时一个显示XANA组织的N走上前和里奥打招呼:“哈喽,构建师,好久都没见你来了,你在干嘛?” 里奥尴尬一笑:“最近比较忙。” N点头没再说什么,离开了,里奥再看其他人,发现只有同组织的人才能看到对方的身份牌。 里奥继续在里面探索,发现自己的VR像是被格式化过,只有背包里有一封信:帮帮这个世界,帮帮我。 里奥觉得这话有些奇怪,没有在意,继续在四周打探,想要多了解这个缤纷的世界,但发现自己的等级还不够高,只能到达F区和E区,F区没有任何规则可言,任何人都可以进到里面,在里面的人,可以凭借自己的才华,赚取相应的费用,但由于没有规则,里面有各种地头蛇,不断有战乱,想要统治F区,但很显然没有一个成功的,可能因为缺少制定规则的人。 E区和F区完全不同,但E区也毫无规则,但在E区的人都有着足够的虚拟货币,大家在这里实现着自己的理想,有生物学家,哲学人士,还有伟大的艺术家,在这里随处可见的无价之宝,但进到E区需要邀请函,这也是里奥疑惑的地方,他居然可以随意进出E区。 里奥走了好久,突然一个出现两个人出现,绑架了里奥。 等里奥醒来,已经到了一个大仓库,自己也被吊在天花板上,里奥睁开眼睛,看向地面,一个年老的老者,旁边一只异兽旋龟,这是《山海经》里记载的生物,里奥盯着异兽旋龟,异兽旋龟可能感受到里奥炙热的目光,不耐烦的抬头嘶吼,声音如同劈开的木头。 老人手拄拐杖坐在椅子上,像是在等里奥清醒,一脸和善友好的表情,让挂在天花板的里奥有些诧异:“嘿,老头,能不能放我下来再说?” 老人笑了笑:“你觉得我和我旁边的朋友有能力把你从五米高的天花板上救下来吗?” 里奥思索一下,好像是,两个都是陆地生物,不会飞。 不久,仓库的大门被打开,一束光照进来,走来三个男生,异兽旋龟起身躲在老人身后,老人不忘安慰:“没事,没事的孩子。” 里奥撇了撇嘴:“这还异兽旋龟,你们到底干嘛的?快放了老子,知不知道失业的人不能惹?”…
Read More

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

「あのマスター、違うといえば、確かにそうなのです。十時間ほど前から、今までにないことが起きているのは確かです」 「――今までないこと、それはなんだ?」 「はい、マスターへの通信ができなくなっています」 そうか、それでヒメミはここまで歩いて報告に……。 コントロールパネル自体ないから、通信メニューを開きたくても出て……。 ――プン。 えっ、なんだ、いきなり通話メニューが右上の視界にポップアップしたぞ。 右手をそのメニューに伸ばし、AI秘書パネルを開こうとする…… ――プン。 まただ、パネルが開いた。 これもしかして、考えたことが…実行されてる? 一体どういうことだ……まさか俺の思考をよみとってるのか? いや、そもそも今俺VRゴーグルつけてないよな……いや、もしかして――! そこであることを思い出した。 そうだ、一週間ほど前の事だ。 XANAメタバースがスタートして一年後、秘書たちのAIマザーが第二世代と進化して、AI達が疑似感情を持つようになり、よりリアルな態度をとるようになった。 そして更に三年目が過ぎようとするころ、巨大なゲームファイ企業がXANAに参入することになった。 そして一週間ほど前、最新の専用AVゴーグルの試用版というものが送られてきた。…
Read More

恋とAIと

心地のいい日差しに照らされた、新緑の草原。一本の大きな木が作りだす木陰には、爽やかな風が吹いている。 「はぁ…。」  木に寄り掛かり、さわさわと揺れる木漏れ日に包まれながら、その男は、この場所に似つかわしくない、重たいため息をついていた。 「…何か悩みでも?考え過ぎによる慢性的なストレス負荷は、心身の不調に直結しますよ、レイジ。」 「ああ…そう言うのじゃないから…大丈夫だよ、メイ。心配してくれてありがとう。」  レイジ、と呼ばれた男は、そう言葉を返しながらも、すぐにまた深いため息をつく。それを見たメイ、と言う名の女は、何やら頭の中で思考をまとめるように、間をおいてから口を開いた。 「…そういうの、巷では『察してちゃん』って言うらしいですよ。人に嫌われる性格の代表格です。」  豊かな自然の中で、男女が言葉を交わす。一方が悩んでいるようで、もう一方は心配しているようだ。地球上のどんな国や地域でも見られる、いわばごく普通の光景だが、このやり取りは、地球上ではないある場所で行われていた。 そう、ここは仮想現実が作り出した世界、メタバースの中だ。 「えぇ!?いや、別に何かを察して欲しいとかじゃないから!っていうか、そんな言葉まで知ってるの?」 「もちろんです。古語から新語·流行語まで、現実社会のありとあらゆる言葉は、全て学習していますから。」 「そ、そうなんだ…それじゃあ、僕とのこの会話も、その学習によって成立してるってことだよね?」 「はい。多種多様な人間による様々な性格や思考、会話や非言語コミュニケーションのパターンから算出して、最も適した言葉を選択しています。当メタバースのチュートリアルで、ご説明申し上げたはずですが?」 「あ、なんか面倒だったから、あまり聞いてなかったんだよね…アハハ…。」 「まったく…レイジは本当にものぐさでぐうたらな怠け者ですね。」 「いや、そこまで酷くないでしょ!それに、その毒舌は言葉のチョイス間違ってない!?」 「いえ、レイジのような、ちょっとイジメられたい願望を持つ男性には、このくらいキツい言いまわしにした方がいいと、私の中のAIが。」 「ち、違うから!大体、どうして僕がそんな願望持ってるなんて分かるんだよ!」…
zh_HK