目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

11話「帰る場所」


ヤキスギさんが用意してくれたのは、背中合わせに背負えるおんぶ紐だった。

紐というより、リュックのようなイメージだ。

両手が自由に使えるのはありがたい。

ヤキスギさんとリブさんは、「そこまで送りますよ」と玄関まで見送りに来てくれた。

ギルドハウスを出るとき、あっ、これまずい――! と気づいたのだが、もう遅かった。

即座に三人のAI娘たちの鋭い視線が飛んできた。

いや視線だけではなかった。

ミサキとカエデが、ほぼ同時にすっ飛んできて、あっという間に取り囲まれた。

俺にとっては、飛んでこないヒメミの方が怖いけど……。

「ちょっと、マミちゃんどういうこと!」

「なんでマミだけ、そないなことしてもろうてんねん」

「いや、ちょっと待て……」

そこへ、ヒメミが急に二人を押しのけてきた。

そして俺に背負われているマミの右足に触れる。

そうか、察してくれたのか……。

「――どうしたのこれ!」

その言葉にミサキとカエデも、マミの右足の膝から下が欠損していることに気づく。

「やだ――なに!? その足――」

「ほんまや! マミの足があらへん……」

 

「――というわけなんだ」

俺は、先ほどのバグバスターペンギンたちとの戦いを三人に話して聞かせた。

うわっ――!

いきなりヒメミが抱きしめてきた。

だが俺じゃない。

背負われているマミを俺ごと抱きしめてきたのだ。

自分でもわかるほど、顔が赤くなった。

女性の方から抱きしめられるなんて、そんな幸せなことは、今まで経験がないのだから仕方がない。

「頑張ったね、マミ、偉いよ」

ミサキとカエデも、マミの傍までやってきて、その頭を撫でる。

「よくやったね、マミちゃん。マスターを守ってくれて本当にありがとう」

「見直したで! やるやん、マミっち!」

ふぅ、良かった――これで平和になるな。

三人の中で、マミの株が上がったようだし、うまくいきそうだ。

地下迷宮オブロでは、この娘たちの連携が重要となってくるだろうから。

「あれ、なんでマスターまで赤くなってんねん」

「いや、その……ちょっと暑くってさ」

マミは、少し頬を赤らめて照れたようだが、俺からは見えない。

「でも、そのままじゃマスターの負担になるから。私が背負います」

ヒメミは俺の返答を待たずに、強引におんぶ紐を外しにかかった。

「えっ、ちょっと……」

俺が全部言う前に、ミサキとカエデもそれに加担する。

「そうですね! そうするべきです――」

「そやな――。マスターに負担かけたらだめやんな!」

マミも抵抗するが、三人がかりでは徒労に終わったようだ。

少し不服そうな顔をしたマミは、ヒメミに背負われることになった。

俺は、前衛役のヒメミに背負わせるのはどうなんだ!? と思いつつも、それを言い出す勇気は出ない。

「よいたろうさん、これ持って行ってください」

リブさんが差し出したものを見ると、グリーンの卵だった。

「えっ、これは?」

「地下迷宮オブロ用に作った回復卵です」

「回復?」

「デュエルでは使えないですが、オブロの仕様書に従って作ったので、ヒットポイントが回復するはずです。ただし、まだ鶏たちのレベルが低いので、一個で回復する量は二十パーセント程度なんですけど。もし効果が出なかったらすいません。この状況ですから、試験もできてなくて」

「こんな素晴らしいものを……えっ、二十個もありますよ、こんなに……」

「ええ、もちろん! もっと差し上げられればいいんですが……まだそれだけしかできていなくて」

「いやいや、こんな貴重なものを、ほんとありがとうございます」

「僕からは、これを」

ヤキスギさんが差し出したのはJXBカードだった。

XANAメタバースの各種ショップで、店員AIに見せるだけで使える便利なプリペイドカードだ。

「えっ、これはまずいよ、通貨みたいなものじゃ……」

「いえ、ぺんちょさんを通して、リアムンさんから餞別に渡されたものです。これでオブロの装備を整えてはどうでしょう。仲間を救うためでもありますし、遠慮無く受け取っていいと思いますよ」

――なんかさっきから、俺、死亡フラグ立ってないか?

「ありがとうございます。必ず先行しているみんなと一緒に帰ってきます――!」

「はい、ぜひそうしてください。帰る場所は、僕たちが全力で護りますから」

ヤキスギさん、まじカッコイイ! 惚れちまうぜ――。

「ですね、俺もニワトリファイターにかけて誓います」

「こんな時でもニワトリ愛なんですね……」

ニワトリ愛の強いザナリアンは多い、既に五十羽を超えて飼育している人たちも複数いる。

そう言って三人で笑い、俺はAIたちとオブロに向けて出発した。

(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ)

ja