目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Episode 17 17話「ジェネシスカード」


両開きの扉を軋ませながら扉を開く。

先の見えない緩やかな下り坂がずっと続いている。

ここからは一本道にしか見えないが、幅はかなり広く、天井もかなり高い。

幅は五人ぐらいが横に並んでも余裕のある広さで、高さも十メートル以上はありそうだ。

隊列は、一列目左から、ヒメミ、カナ。

二列目左から、忠臣君、カエデ、ダチョウに乗ったゆっきーさん。

三列目左から、ミサキ、センちゃんに乗ったマミ、俺だ。

これでパーティ制限の十人になってしまったので、他のペットは出せない。

「あの、マスター」

「ん? なんだマミ」

「ここって、モンスターだけじゃなくて、罠もあるから危ないよ」

ズドン――!

「うわーっ」

右の端っこを歩いていた俺は、さっそく罠にかかった。

壁に刻まれた文様に気を取られていて、下をまったく見ていなかった。

明らかに仕掛けがあると分かる。

その床だけ正方形の切れ込みがあったのだ。

幸い、穴の深さは一メートルもなく、ダメージはまったく無かった。

「くっくく、ごめん、まさかはまるとは思わなくて。油断してたよ」

ダチョウから降りたゆっきーさんは、笑いを堪えながら、引っ張り上げてくれた。

さすがに赤面せずにはいられない。

それにしても意味のない罠だ。

ダメージゼロって、ネタかよ。

「マスター……はぁ~」

ヒメミは少し呆れた顔をした。

だが、他のAIたちは優しく微笑んだ。

「いくらなんでも、そんなにはっきり見えてる罠に落ちるなんて、マスターったら可愛い」

「マスターらしゅうてええかもね」

「殿は、みんなの緊張を和らげようとしたでござるな、さすがでござる」

ゆっきーさんも、とうとう堪えきれず、カナと顔を見合わせて、クスクスと笑う。

緩やかな下り坂が終わり、平坦な通路に出る。

その先も、まっすぐ直線の通路が続くが、少し先に十字路がある。

「右方向から何か来ます――おそらく小型モンスター」

先頭右側を歩いていたカナが告げた。

「左からも来ます――こちらもおそらく小型です」

続いて左側のヒメミも告げる。

「よいたろうさん、ここで待ち受けましょう。カナ、メタルジェネシス、セット!」

「はい、マスター!」

カナがメタル属性のジェネシスカードを取り出すと、左手に持つ盾にカードが重なり金色に輝いた。

盾にジェネシスの効果が付加された。

「了解! ヒメミ、メタルジェネシス、セット!」

「はい、マスター!」

同様に盾が金色に輝く。

 

「バードスキル発動――! HPバフ!」

虹色のエフェクトと軽やかなメロディーが流れる。

レベル1だから気休め程度だが、全員のHPバーが少しだけ増える。

直後、右側から出てきたのは、犬の頭を持つ毛むくじゃらの人型モンスターだ。

背はマミと同じぐらい、ステータスを見ると、コボルトだ。

レベルは1~3で、警棒のような小型のこん棒武器を持っていた。

俺たちに気づくと、グギャッギャッギャッ――と奇妙な声を上げて突進してきた。

カナとヒメミは盾を突き出し、最初の集団をノックバックする。

前列のコボルトは、のけ反って後退するが、その間から次のコボルトたちが突進してくる。

コボルトたちは、ただただ無茶苦茶にこん棒を振り回して攻撃する。

ナイト職カナの大剣は一振りで大ダメージを与え、一度に二、三体のコボルトを屠る。

しかし、一振りの間隔は大きいため、その間に次のコボルトたちの突進で攻撃を受ける。

個々のダメージは少ないが、少しずつHPが削られていく。

パラディンのヒメミは、小型の剣で素早くコボルトたちを切りつける。

二振りで一体倒せる程度の攻撃力で、カナほどではない。

しかし、パラディンにはパッシブスキルがある。

何もしなくても、自動回復が働き、受けたダメージの半分ぐらいは回復している。

「ファイヤージェネシス、セット――!」

ゆっきーさんは、ファイヤー属性のジェネシスカードを自分の一メートルほど前に立てる。

「カナ、右側少し空けてくれ」

「はい、マスター!」

カナが少し左に寄ったところで、持っていた銛をジェネシスカードめがけて放つ。

「いけ―ぇ!」

銛はジェネシスカードを通過すると炎を纏い、コボルトたちに飛んでいく。

――ギャギャー!

コボルト二体を貫通し、さらに炎が周りに広がり、一度に四体ぐらいのコボルトがくずれ落ちる。

全身毛深いコボルトは、引火しやすいようだ。

ステータスを見ると、火がウィークポイントだ。

「ヒメミ殿、カナ殿、間を失礼するでござる」

忠臣君は、刀を鞘に納め、槍に装備変えて、前衛の二人の間に振り下ろす。

二体のコボルトの頭を打撃しカチ割る。

さらに、切先を回転させるように振り回し、周囲のコボルトを薙ぎ払う。

その空いた隙間に飛び込み、今度は刀を抜き、周囲のコボルトを次々と切り払う。

やっべー、つえーじゃん、忠臣君――。

「凄い攻撃力ですね、武士職もいいなあ、今度作ろうかな――」

ゆっきーさんは、武士を気に入ったようだ。

しかし、押し返したのもつかの間、さらに右から新手のコボルトが湧き出てきた。

前衛よりも突出した忠臣君めがけて殺到する。

「下がって忠臣君――!」

タコ殴りになりそうになった忠信君の前に、ヒメミが割り込む。

「かたじけない――」

ヒメミが中央前方に少し寄ったことで、最前線がいびつになってしまう。

左側の壁との間に空間ができ、そこをコボルトがすり抜けてきた。

「あっ、ごめん――カエデ、行った!」

「こっちはうちに任せてや!」

カエデは左からすり抜けてきたコボルトたちに、クナイを放つ。

倒せはしないが、ギャッ、ギャッ、と叫び、動きが止まる。

カエデは、そのコボルトたちに突っ込み短刀を突きたてる。

さすがくノ一、スピードはピカイチだ。

突出してきたコボルトは動けないまま崩れ落ちた。

「くノ一もかっこいいなあ……」

ゆっきーさんがちょっとうらやましそうに呟く。

「ありがとう、カエデ!」

忠信君が下がったところで、ヒメミは左に寄り、前線の位置が元に戻った。

忠信君は、再び槍を構え、前衛の間を擦り抜けようとするコボルトたちを突き刺して防ぐ。

次から次へと湧いてくるコボルトたちとの削り合いが続く。

「少し前線を下げてくれませんか、曲射で後衛を叩きます」

ミサキの意図を全員が理解する。

曲射砲のように矢を射って、湧き出てくる後方のコボルトたちを射撃するつもりだ。

「全員後退準備。ゆっきーさんいいですか」

「オッケー、カナ、ヒメミちゃんに合わせて」

「はい、マスター」

「大股で五歩後退してください!」

ミサキが後退距離を指示する。

「それとマスター、後退したところで、ファイヤージェネシス、セットお願いします」

「分かった! 全員後退開始、三、二、一、ゴー!」

俺は全員の後退を確認し、ミサキにアイコンタクトする。

ミサキは、少し上を見て、弓を引きつける。

そこに出してほしいという事だ。

「ファイヤージェネシス、セット――!」

ミサキが放物線射撃をしやすいように、少し高い位置に出した。

「さすがです、マスター、そこ最適です!」

ミサキが放った矢は、ジェネシスを通過すると真っ赤な炎を上げる。

前線のコボルトたちの頭上を通過して、右から出てきた直後のコボルトたちに到達する。

続けて、二矢、三矢と放つと、前線へのコボルト増加スピードが落ちてくる。

前線へのコボルトの新手が減ったことで、しばらく優勢が続いた。

じりじりと、前線が前進する。

しかし、まとめて敵を屠っていたゆっきーさんの五本目の投擲用の銛が尽きた。

倒した敵の場所まで前進できないので、銛の回収ができない。

ゆっきーさんは、三又の銛をアイテムボックスから取り出す。

カナの右側から抜け出してくるコボルトを一体ずつ突き刺す攻撃に変更した。

削り合いは一進一退だが、次第にコボルトの圧力が落ちてきているのがわかる。

だが無傷ではない、カナのHPバーが四十パーセントを割ってきた。

ヒメミも五十パーセントを割っている。

緑色に輝くプラントジェネシスカードをマミの前にセットする。

「マミ、カナちゃんをヒール」

「はいマスター、ヒール!」

既に予測していたマミは、即座に反応し、右手を挙げ、白いキラキラした光を放つ。

ジェネシスカードを通り抜けると、緑色の輝きに変わり、カナに吸い込まれていく。

カナのHPバーが七十パーセントまで回復する。

「ありがとう、マミちゃん――!」

ゆっきーさんと、カナがほぼ同時に言う。

ジェネシスカードを使っても、レベル1のマミでは回復量は少ない。

「どういたしまして」

問題なのは、スキルを使った時のマナの消費量だ。

マミのステータスをみると、今ので二十パーセントのマナを消費している。

単体へのヒール一回で二十パーセントの消費はきつい。

あと四回しか使えないってことだ……温存しなければならない。

全体ヒールという手もあるが……かなり消費しそうだ。

「コボルトの出現が止まりました」

カナが右から出てくるコボルトが途絶えたことを報告する。

ほっとする間もなく、それはすぐに打ち消された。

「マスター、左から別の何かが来ています」

それはコボルトの群れの後方に、新たに現れた。

コボルトより少しだけがっちりしている。

人に近い顔だが、鼻や耳が尖り頭が禿げ、肌の色は緑で体毛はない。

初期モンスターの定番、ゴブリンだとすぐにわかる。

「火炎弾注意――!」

「火炎弾来ます――!」

カナとヒメミがほぼ同時に叫ぶ。

「ファイヤーレジスト――!」-

俺はすぐに火炎耐性のバードスキルを発動した。

なんとか間に合い、全員が仄かに青い光をまとったところに、火の玉のような火炎弾が着弾する。

「あちっ! うち、火は苦手なんやわ」

そういえば、カエデは火が弱点だったはずだ。

「火炎弾次来ます――」

次々と、火炎弾が飛んでくる。

ゴブリンたちは戦士を前面に出し、後方に魔法職を配置していた。

俺のレベル1のファイヤーレジストではダメージは大して防げない。

逆に、ゴブリンたちは、火炎耐性があり、ミサキの曲射が延焼を起こさない。

明らかにコボルトたちより手ごわい。

俺を含めた二列目三列目のHPが、どんどん削られていく。

 

「これちょっとまずいですね――後方の魔導士やらないと……」

ゆっきーさんが、俺の方を振り返る。

まったくその通りだ。

なんだよオブロ――、第一階層でもうこれかよ。

序盤からモンスター湧き過ぎだろう――!

 

「マスター、うちが、魔導士やってきます」

「えっ?!」

(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ)

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