目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Episode 30 30話「イブに支配される者と屍」


「ふう、危なかったな……」

「マスター……注意してください!」

「ん? なんだヒメミ」

「まだボス部屋をクリアできていないかもしれません」

「えっ!」

確かに入り口も出口も、ドアのロックが解除された音はしていない。

そういえば、階層クリアの情報も全く表示されていない……。

「レベルアップもしていないです」

「まさか、あいつボスじゃなかったのか……」

「わかりません。マミ、何かわかる?」

「うんと……」

ガッガガガー。

全員ビクッとして、音のしたほうを見ると、壁が開き鉄格子のついた部屋が現れた。

「――よいたろうさん!」

「――おお! よいたろうさんだ!」

「えっ!」

たもつさんとダブルティムさんが、その中にいた。

「お二人とも、なんで鉄格子の中にいるんですか?!」

「俺たち、負けたんだわ」

たもつさんは、思いのほか気軽な表情で言う。

「よかった、負けても無事なんですね!」

俺は心底ほっとした。

「それが謎なんだよね。俺たち気がついたらここにいたんだ」

「通常ならリスポーンするはずですよね?」

「俺の登録場所は桟橋だから、リスポーンしたら、タイミングによっては、バスターペンギンにやられるけど」

確かに、バスターペンギンが来たらヤバい。

「俺は、いつ出られるか分からないこの牢獄がキツかったけどね」

ダブルティムさんは、この拘束状態の方がキツかったようだ。

……そうだよな、こんな所で誰にも知られず拘束状態はキツい。

「それもキツいですね。ただ、データ抹消という推測もあったので、心配してましたよ」

「ああ、それリアルに死ぬやつ。ちょっとそれは自分も心配してた」

たもつさんも、データ抹消による命のリスクについて考えていたようだ。

「イブは何を目的に捕獲したんですかね……」

「どうだろうね、元々の仕様の可能性もあるし、何か意図があるのかも……」

「ちょっと待って――!」

ダブルティムさんの発言を、たもつさんが遮る。

「今はそれよりやるべき事がある、二体目のボスはまだ出てないよね?」

「えっ! 二体目――!」

「今、ガーゴイルを倒したところだよね? ――俺たちもそうだったから」

「はい」

「じゃあ、ここ早く開錠して。スキルある?」

まじか、それやばいぞ――!

慌てて開錠スキルのあるネズミのチュー太を出す。

チュー太に開錠させたが、エラー表示が出る。

「マスター、ボス部屋をクリアしていないので無理かもしれません」

そうか、ヒメミが言うように、その可能性は高い。

「確かにそうだな。俺たちはここから支援しよう」

たもつさんが言うと、ダブルティムさんが頷き同意する。

「えっ、牢の中から?」

「俺もダブルティムさんも召喚師取得しているから、牢の外に召喚できるはず」

「なるほど……」

「試してみようか、ダブルティムさん」

「そうですね、やってみましょう」

「ファイヤージェネシスセット、サモン、XANAウルトラセブン――」

たもつさんが、牢の鉄格子の外にファイヤージェネシスをセットして、召喚スキルを使用した。

「おおー、すげー」

ジェネシスカードからXANAウルトラセブンが出現した。

「いけたで! ――鉄格子で阻害はされないらしいな」

たもつさんは満足げだ。

「いけますね。メタルジェネシスセット、サモン、XANAアトム――」

ダブルティムさんが、同様にメタルジェネシスカードを使って、XANAアトムを召還した。

「召喚師いいなあ……」

「うん、すげー便利。ただ一体ずつしか出せないけど」

「あれっ、そういえば、たもつさんは戦士職じゃなかったですか?」

「そうだよ。召喚師は他の職と重ねて取れるから」

「えっ! そうだったの、知らなかった。それ召喚師だけですか?」

「だけだね、いや、もしかしたら他にもあるかも。全部マニュアル読んでないし」

それには俺も、たもつさんに全力で同意だ。

あのマニュアルは分厚すぎる。

「ソロプレイヤーで、AIも持っていない人向けの仕様だと思います」

ダブルティムさんが付け加えてくれた。

「なるほど、ソロプレイヤーでAI持ってない人には必要なのかもですね」

しかし、複合で取れる職なんて考えもしなかった……。

「それより、よいたろうさんのパーティー、戦える状態じゃないじゃん」

たもつさんはミサキ、マミ、ヒメミのステータスを確認したようだ。

「お二人のAI秘書たちはどうしたんですか……」

二人とも少し悲しげな目をした。

――しまった、余計なことを……。

「俺の六人のうち三人は、オブロに入る前に失った。ここでHPゼロになった二人は、外にリスポーンしてるはず……」

「リスポーンということは、復活している?」

俺は嬉しい知らせに、つい、たもつさんの言葉を遮ってしまった。

「いや、分からんけど。バスターペンギンたちに身体を削られて塵になったAI娘たちとは違って、ただ消えただけだから」

「なるほど……マミ、オブロの仕様は今も設定どおり稼働している?」

「ごめんなさいマスター、それはマミにも正確にはわからない……」

「そうか。そうだよな。どこまで正常なのかわからないよな」

「俺のAI二体も、ここでHP切れだったので、そうだといいな……。だけど、第三世代AIは逃亡したんですよね」

ダブルティムさんが怪訝な顔で、マミを見たあとに言った。

「えっ、どういうことですか?」

「第三世代AI、いや全部じゃないんだけど、子ども設定の娘たちは全員逃げ出した」

「えっ、リスポーンじゃなくてですか?」

「そろそろ反対側の壁が開いてボスが出てくるはずだけど、そこからみんな出ていってしまったんだ」

じゃあ、もしかしてマミも……。

「ギルマス、ヤキスギさん、リブさん、チックタックさんから借りた四体もね」

たもつさんが付け加えた。

「まさかそんな……イブの命令でしょうか?」

「ありえるね、イブの命令。だからそのAIを……」

――ガガガガ―ッ。

二人が閉じ込められていた牢屋と反対側の壁に亀裂が入り、シャッター扉のように壁が上に引き上げられた。

「来るぞー、おそらくミノタウルスだ!」

「マスター、たもつさんたちをパーティーに入れてください」

「了解!」

さすがヒメミ、いつも重要なことは忘れず指摘してくれる。

パーティーに入れていないと、バフも回復も出来ないところだった。

俺は急いで、二人をパーティーに招待する。

「受け取った!」

「ありがとうございます!」

二人はすぐに承認し、パーティーパネルに加わった。

グォー――!

牛の頭部を持つ化け物、ミノタウルスが突進してきた。

「スキル、挑発――」

たもつさんが戦士スキル、挑発で敵視を上げて自分のいる牢の方へ誘導した。

牢の前でXANAウルトラセブンが立ちはだかる。

ミノタウルスは大きな斧を両手で振り下ろす。

XANAウルトラセブンは間合いを詰めて、その斧を白羽取りのように受け止める。

ダメージを受けるが、XANAウルトラセブンは堪えた。

上空からXANAアトムが助走をつけ、ミノタウルスにパンチ攻撃をする。

「ファイヤージェネシスセット、火炎弾!」

さらにダブルティムさんは、自身でも火炎弾を放つ。

あっ、ダブルティムさんはウィザードか。

俺たちは、気を失っているミサキの周りを囲んで防御態勢をとる。

マミにかけたマナ自動回復スキルはまだ有効で、まもなくマナが二十パーセントまで回復する。

しかし、俺のAI秘書たちは、まだまだ戦えるほどのステータス状態ではない。

ミノタウルスのHPを十パーセントほど削る間に、XANAウルトラセブンは半分ぐらいHPを削られている。

とてもこのまま堪えられそうにはない。

「俺が援護出来ることはないですか」

「よいたろうさん、ミノタウルスは氷結耐性がある、攻撃するならそれ以外で。ただし、盾役なしでむやみな攻撃はダメだ」

そう言って、たもつさんは、新たにアースジェネシスをセットした。

XANAウルトラセブンがやられるのは前提とした準備だろう。

「よいたろうさん、こいつ斧振るとき、衝撃波が来ます。そのダメージ範囲は約九十度、射程は十メートル以上あります。気をつけて」

ダブルティムさんが情報共有してくれる。

「了解です!」

十メートルもか――! こいつは厄介だ、距離をとってもダメージを受けるってことか。

回復ポーションは無い、センちゃんのスキルも戦闘中は使えない、リブさんにもらった卵もだ。

ただ、AIたちの回復を待つしかないのか……。

ドスン――。

XANAウルトラセブンと取っ組み合っていたミノタウルスは、後ろに跳びのき、斧を振り上げた。

やばい、間合いをとって攻撃するつもりだ―!

――ギューン、ズザー!

衝撃波が走った。

XANAウルトラセブンが間合いを詰めようとしたが、一瞬早く斧が振り下ろされ、XANAウルトラセブンは消滅。

牢にいた二人にも衝撃波が到達し、三十五パーセントほどHPを削られた。

「バーストアタック!」

――ガツン!

ダブルティムさんが、XANAアトムをミノタウルスに体当たりさせた。

自爆スキルみたいなものか……。

XANAアトムは砕け散ったが、ミノタウルスのHPを十パーセント削った。

その勢いで、ミノタウルスはよろめき、体勢を崩す。

「サモン、エース!」

すかさずたもつさんが、アースジェネシスカードを使い、XANAウルトラマンエースを召喚する。

手慣れた連携だ。おそらくここまで二人で戦ってきて、得たことなのだろう。

「チェンジ、ファイヤージェネシス、――サモン、アトム」

ダブルティムさんは、消滅したメタルXANAアトムの代わりに、ファイヤー属性のXANAアトムを召喚した。

「その子は……えっと、マミちゃんか。マミちゃんは大丈夫そうかな?」

たもつさんが、マミが逃げ出さないのを見てそう言った。

「えっ? あっ、そういえば……」

「いや、イブが命令していないだけなのかな……」

「マミ、どうなんだ?」

「マスター私ね、ずっと前からママの元に帰りなさいって言われてるよ」

「えっ、そうだったの!」

「でもマミ、マスターといたいもん」

「そっ、そうなのか……」

「その子、イブの指示を拒否してるのか……」

ドン――。

――ギューン、ズザー!

ミノタウルスは再び後ろに跳びのいて、斧を振り下ろした。

「チェンジ、ウォータージェネシス」

たもつさんは、XANAウルトラマンエースが次は耐えられないと、最初に出していたファイヤージェネシスを交換し、次の召喚の準備をする。

だが、ミノタウルスの行動は、さっきより早かった。

――ギューン、ズザー!

一発目の直後に再び振り上げ、二発目をすぐに振り下ろした。

一発目は防ぎきったXANAウルトラマンエースも、二発目で消滅する。

牢の二人にも更に衝撃波が到達する。

二人とも残りHPが三十パーセントを切ってしまった。

「バーストアタック!」

ビュッ――ガン!

ダブルティムさんがアトムを体当たりさせたが、ミノタウルスは斧でガードした。

学習している行動だ。

それでもダメージは入った、残りHPは四十パーセントほどだ。

だが、斧で防御した分、ミノタウルスは体勢を崩さなかった。

そして、すぐまた斧を振り上げる。

「サモン、ウルトラマン――」

――ギューン、ズザー!

今度は、たもつさんのXANAウルトラマンの出現が間に合わなかった。

出現前だったので、二人とも直撃ダメージを受けてしまう。

「――ティムさん!」

戦士のたもつさんは、残り五パーセントほどのHPで耐えたが、ダブルティムさんはゼロになった。

「ごめん、先行く……」

ダブルティムさんは苦笑いを浮かべたかに見えた。

その確認もできない間にパッと白く光り、身体が消えた。

転送されるときのエフェクトだったので、少しほっとする。

確信は持てないが、オブロ外にリスポーンした可能性が濃厚だ。

たもつさんは、何かアイテムを取り出した。

ペットのネコとポーションだ。

「くうっ、今のやべー、よいたろうさん、これを使って!」

「えっ、たもつさん、それは自分に使わないと!」

「いや、俺が使うより、そっちのパーティーで使ったほうがいい。疑ってすまないマミちゃん。それと、たぶんこいつ魅了スキルが弱点だ」

「魅了スキル?」

「ああ、俺のももこ、バード職だったから」

ネコが鉄格子をすり抜けて届けに来たのは、マナ五十パーセント回復ポーション二本だ。

「でも……」

「いいから使え――! ダブルティムさんの犠牲を無駄にするな!」

「……」

――ギューン、ズザー!

今度はXANAウルトラマンがダメージを受けとめた。

考えろ俺、誰にポーションを使うべきなんだ。

ヒメミとマミか……、いやマミでは、ミノタウルスは倒せない……。

でも、たもつさんを回復できれば……、ミサキはマナを回復しても、スタミナがまだ足りない。

「あっ、マスター……」

マミの声で振り向くと、ミサキが目を開けていた。

「ミサキ、気がついたか!」

「すみません、私……」

「まだじっとしていろ、回復に努めるんだ」

もう二十分以上経っているが、戦闘中の回復は凄く遅い。

ミサキは、ようやくスタミナを十数パーセントまで回復しただけだ。

まだミサキに戦闘は無理だろう、まずはヒメミだ。

「ヒメミ、マナ回復、このポーションを使え」

「はい、マスター」

マミのマナを確認すると、自動回復で二十五パーセントほどに達していた。

「マミ、マナが回復したら、たもつさんを単体ヒール。すまんがこれは俺が飲む」

「はい、マスター。マミは大丈夫だよ」

「うん」

俺はマナポーションを飲んだ。

パーフェクトディフェンスとオートマナリチャージを自身にかける。

「ヒメミ、ボスの背後に」

「はい、マスター」

「俺は、ヒメミの背後にまわる」

「はい、マスター。私の盾のメタルジェネシス効果が切れています」

「あっ、そうか、ちょっと待ってくれ」

「セット、メタルジェネシス……」

だが、セットされない……予想はしていたが、まだ戦闘継続中でクールダウンタイマーがリセットされていないのだ。

「すまん、ヒメミ」

「大丈夫ですマスター、なくても受け止められます」

「魅了を使ってみる、こっちに来たら頼む」

「はい、マスターを絶対護ります!」

「マスター、もうすぐヒール使えるよ!」

マミが叫んだ。

「了解、プラントジェ……」

「待ったー! よいたろうさん。こいつ挑発よりヒールに敵視いくからダメだ。それで俺のうめこもやられたんだ」

「いや、でもたもつさん限界だし」

「いいよ、秘書たちもきっとリスポーンしているだろうし、またここまで出直してくるから」

「でも、まだリスポーンできるって決まったわけではないから」

「いや、今は五階層攻略の可能性の高い選択肢を選ぶべきだ」

「……」

「俺の屍を越えていけ」

「えっ?」

「いや、そこはつっこむところだろ!」

「えっ……」

この状況で、なぜそんな余裕あるの、たもつさん……。

「一度言ってみたかったんだよね」

ドン――。

――ギューン……。

それを待ってたんだよ!

「させるか、魅了――!」

ミノタウルスが斧を振り上げた状態で固まり、よろよろとする。

「いけ、ヒメミ――!」

「はい、マスター!」

ガシッ――。

ミノタウルスの背後からヒメミが切りつける。

だが、ヒメミの一撃では、一パーセントほどしか削れない。

ガシッ――、ガシッ――、ガシッ――。

重ねて連撃を加えていると、ミノタウルスがゆっくりと振り向く。

まだ魅了が効いていて、その動きは緩慢だ。

XANAウルトラマンが、背後から攻撃を加える。

徐々にミノタウルスのHPが減っていく。

残り三十パーセントほどになった。

――ギューン、ズザー!

ドスン――。

「うわっ!」

突然、魅了の効果が切れたらしい。

いきなり斧が振り下ろされた。

ゼロ距離でヒメミが盾でガードするが、俺のところまで飛ばされて激突した。

「すみません、マスター!」

「大丈夫だ、ダメージはない」

パーフェクトディフェンスのおかげで、俺のダメージはなかった。

しかし、六十パーセントほどまで回復していたヒメミのHPが四十パーセントを切ってしまった。

ドン――。

ヒメミから距離を取るためにミノタウルスは、後ろに跳んで、斧を振り上げた。

「挑発!」

そこをたもつさんが挑発で、自分のほうに振り向かせる。

――ギューン、ズザー!

ミノタウルスは、振り上げた斧をたもつさんに向けて振り下ろす。

ガシッ!

それを、たもつさんの前に立つ、XANAウルトラマンがガードした。

XANAウルトラマンのHPが二十パーセントを切った。

ヤバい、もう一発きたら、今度はたもつさんがやられる。

「パーフェクトディフェンス、魅了!」

自身にパーフェクトディフェンスをもう一度かけ、魅了を発動する。

斧を振り上げかけたミノタウルスが、ゆっくりとこちらに向きを変える。

俺には、もう一度使えるマナはない。

オートマナリチャージ一回分がいいところだ。

ガシッ――、ガシッ――、ガシッ――。

魅了中のミノタウルスに、ヒメミが斬撃を加え少しづつHPを削っていく。

背後からXANAウルトラマンの攻撃も続く。

残りHPが二十パーセント近くになっている、もうちょいだ!

ドン――。

だが、あともう少しで二十パーセントを切るというところでミノタウルスは正気に返る。

――ギューン、ズザー!

ドスン――。

再びヒメミが後ろに飛ばされたが、そこは俺も学習していて、真後ろにはいなかった。

しかし、奴の衝撃波は九十度の範囲だ。

貴重なパーフェクトディフェンスを消費してしまった。

バカか俺は、奴の右横に回っておくべきだった……。

ミノタウルスは俺の方に角度を変えて、斧を振り上げる。

「こっちよ、ウスノロ! 挑発!」

ミノタウルスは、再びヒメミの方に向きを変える。

「マスター、衝撃波の範囲外へ!」

「すまん、そうする。もうマナがない」

「はい、分かっています」

――ギューン。

「ノックバック――」

バシッ――!

ミノタウルスの斬撃に合わせるように、ヒメミがスキルを発動した。

「ナイス、ヒメミ!」

ダメージは受けたが、ヒメミのノックバックのタイミングが見事だったのだ。

ミノタウルスの斬撃の衝撃波は広がらずに、ヒメミは後ろに飛ばされず、逆にミノタウルスが若干後ろに滑った。

だが、ヒメミのHPは残り二十五パーセントだ。

パラディンのパッシブスキル、自動回復でなんとか保っているが、あと二撃耐えられるかどうかだ。

「チェンジ、アースジェネシス」

たもつさんが、出してあったウォータージェネシスを交換した。

そうか、残り少ないHPのウルトラマンを交換するんだな。

「サモン、ウラン――」

「えっ、ウラン!」

「バーストアタック!」

――ガツン!

XANAウランがミノタウルスに体当たりした。

ミノタウルスのHPが残り十パーセントほどになった。

――グガガガァー。

ミノタウルスは突然雄叫びを上げると、両足を四股を踏むように開いた。

「全員防御、何か仕掛けてきます! マスター、私の後ろに――!」

ヒメミの警告で、俺はその背後に走る。

ビュン――!

――ザッー!

「くっ――!」

ミノタウルスは、斧を床と並行にして、身体を一回転させ、全方位に衝撃波を放った。

ドガッ!

俺はヒメミの背後に入る前に、吹っ飛ばされ壁に激突した。

そのダメージは大きく、HPが十パーセントを切った。

「あとは頼む――」

たもつさんのHPゲージは、あっという間にゼロまで低下し、パッと白く光り、身体が消える。

マミは直撃を受けて、センちゃんと共に壁に激突した。

壁際に座っていたミサキは、HPを削られたものの、なんとか耐え凌いだ。

「マミ! マスターにヒール――!」

ヒメミが叫ぶが、マミの反応は無い。吹っ飛ばされてスタミナも失ったのだ。

「マスター、ファイヤージェネシスを!」

ミサキが弓を引き、ジェネシスを要求する。

もう、それしかない。

「挑発! マスター、今です」

ヒメミが挑発でミノタウルスの敵意を引いた。

俺は、ミサキの前にジェネシスを出せる範囲までなんとか移動する。

「セット、ファイヤージェネシス――」

「スキル、一斉射――!」

(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ&maru)

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