Reborn As A XANA Master

8話「恐怖のペンペン来襲!」


マミがいつになく大声で叫んだ。

俺は足を路面につけて、ブレーキをかける。

急には止まれない。

「早く止まって――!」

「待て、慌てるな、今止まるから、どうしたんだ?」

「なにかが来る……」

マミが言い終わらないうちに、俺にもなにかが来るのが見えた。

なにか、集団が十一時の方向から大量にやって来る。

「何だあれ?」

「マスター、あれ危険! 怖い物来る」

「逃げた方がいいのか……」

「ダメ、もう間に合わない――!」

言い終わらないうちに、マミは俺の背中から飛び降り、俺の前方に出た。

「マミ?」

「マスター下がって、マミが守る」

「えっ……」

さっきまで、か弱そうだったマミなのに?

俺の三分の二もない体格で、俺の前で勇ましく構える。

ぺんぺんぺんぺんぺ――!

やってきたのは、ペンギンの集団だった。

路上いっぱいに広がり、整然と隊列を組んで行進してきた。

横に五列、縦は見えないが……少なくとも二十列はあるだろう。

「デュエル――!」

「えっ?!」

マミが突然デュエルの体制に入った。

その勇姿に見とれる。

ウルトラマンのデュエルカードが5枚、マミの前に飛び出してきた。

「マリガン――!」

マミはコストの高いカードを入れ替えた。

なんだ? こんな時にもデュエルルールが適用される?

てか、あのペンギンたちとデュエルするってこと?

ズボー、ズボー、ズボー、――!

「えっ、なに?」

迫ってきた一列目のペンギンたちが、ロケットのように足もとから煙を噴射し、数メートルほど浮き上がった。

「マスター、伏せて!」

「えっ、はっ、はい――!」

思わず声が裏返ってしまうが、マミに従い路面に伏せた。

「来い!」

マミは盾のように、三枚のカードを前面に並べた。

ひゅんひゅんひゅん――!

飛び上がったペンギンたちが、こちらに向かって九十度方向を変えた。

クチバシを矢のようにして、ミサイルのように飛んできた。

次々とカードにぶち当たってくる。

二枚のカードのヒットポイントがゼロになり粉砕された。

一列目のペンギンたちの攻撃が止んだ。

一枚のカードだけが前面に残るが、ヒットポイントが半分以下になっている。

「ドロー――!」

マミがコールすると、カードが一枚、マミのもとに出てきた。

マミは更にカードを追加して、前面に四枚並べた。

「スキル発動、アタックブースト!」

マミは攻撃力の数値が倍になったカードに手をかざす。

「アタック!」

マミが指示したカードが、ペンギンたちの第二列に飛んでいく。

四体のペンギンを粉砕するが、マミのカードも粉砕される。

「スキル発動、ヒットポイントブースト!」

新しく出したカードのうち、一枚のヒットポイントが倍になった。

「ターンエンド!」

 

しばらくの間、マミとペンギンたちの削り合いが繰り返された。

しかし、デュエルのデッキの枚数は最大四十枚。

マミはデュエルのルールに従がってしか戦えないようだ。

相手のペンギンたちは、列ごとに攻撃して、ターンエンドをするようだが……。

それが、デュエルのルールのせいなのかは不明だ。

また、それ以外は、デュエルルールに縛られている様子もない。

当然、百体以上はいると思われるペンギンたちに対して、マミのデッキ数では分が悪い。

デッキ枚数が、いよいよ残り五枚ほどになった。

ダメだ、まだペンギンたちは五列も残っている。

勝敗が決まるのは時間の問題だ。

だが、それは思ったより早く訪れてしまった。

デッキがなくなるより早く、戦場にでていたカードが、全て破壊されてしまった。

ペンギン側のターンエンド前に、最後の一体がマミ本人に突っ込んできた。

「マミ――!」

「キャー!」

マミの右足に、ペンギンがロケットのように直撃した。

マミの右足の膝下が粉砕された。

マミはバランスを崩して倒れ込む。

XANAメタバースの世界では、グロテスクな表現はない。

ただガラス細工のように粉々になり、宙に消えていくだけだ。

それでも我が子のような存在が傷つくのは心が痛む。

俺は慌ててマミに駆け寄り、抱き上げる。

「ドロー!」

それでも顔をしかめながら、俺の腕の中でカードを引いた。

マミにも一応感情として、ある程度の痛みがあるのだろう。

「マスター、三十秒稼ぐから、逃げて、マミもうダメみたい」

「何言ってるんだ、マミを置いて逃げられるわけないだろ!」

「だめ! マスターはここで消えたら、元の世界に帰れなくなっちゃう――」

「えっ、なんで、そんなこと、理解してるんだ……マミ、お前……」

もしかして第三世代AIは、人間とAIの違いを認識しているのか?

「マミは負けても消えたりしないから、だから逃げて……」

確かにデュエルでは、敗戦してもヒットポイントがゼロになるだけのこと。

AIそのものが破壊されるわけではない……。

「いや待て、お前たちの体がこんなふうに欠損したことなんてないだろう……これはただのデュエルじゃない! 消えてなくなる可能性があるじゃないか!」

「大丈夫、マミの身体デジタルだから……再生できる。でもマスターは、戻れなくなったら……体が……」

やはりマミは人間を理解しているようだ。

たしかにマミはただのデジタル、NFTにしかすぎない……。

「いや待て、NFTって唯一無二だから価値があるんだろ? 似たものは作れても、そのデジタル個体は1つしか存在しないばず……つまり、消えれば二度と同じマミではなくなるよな」

「……」

マミが言葉を返さなかったことで、理解した。

マミ自身、それを分かっていて言っていたんだ。

「スキル発動! スリープ! みんな眠むっちゃえー」

自ターンには三十秒の時間制限があり、自動的に相手ターンになる。

ターンエンドギリギリで、マミはスキルを発動して、ペンギンたちの次の列を眠らせた。

「いいから、マスターお願い、逃げて……」

たかがデジタルAI相手、自分の命の危険をかけて、マミを守ろうとするなんて馬鹿げている――。

そうだ、そんなことは分かっているけど、どうにも止められない。

もういい、やけくそだ――。

「あのロケット並のスピード、スケボーでも逃げられそうにないし。NFTデュエルゲームで人が死ぬなんて、ありえないからさ」

「違うよマスター――これはゲームなんかじゃないの……あいつら、バグハンターなんだよ……マスターをバグとみなして消しにきてるの……だから……」

なにを知ってるんだ、この子……。

この現状を実は知っているのか――?

ブー――。

ペンギンたちのターンが終わり、マミのターンが来てしまった。

「ドロー! どうしてわかんないの!」

マミは二枚のカードを盾にした。

「スキル発動! ヒットポイントブースト!」

一枚のヒットポイントが倍になった。

だが、次のターンを持ちこたえられそうにない。

ペンギンたちも後列に行くほど攻撃力が高くなっているようだ。

レベル七のカードでも、二体の攻撃を受ければ破壊されてしまう。

「マスターのおばか! しらないから――ターンエンド!」

「きっとなんとかなるよ」

もともと現実感が乏しい俺は、なんだかマミを守りたい、いや守れなくても置いていけない心境だったのだから仕方がない。

ペンギン隊の猛攻が始まる、四体目のペンギンが飛んできたところで、こちらのデュエルカードが全部破壊された。

五体目のペンギンが、突っ込んでくる。

膝を突き、左腕でマミを抱え、半身になり、飛んでくるペンギンを右手で払いのけようとした。

そんなことができるとも思っていないが、右腕一本の損害なら死にはしないさ――。

「ふぎゃー」

顔をそらして右手で払いのけたとき、それは起きた。

恐る恐る見ると、飛んできたペンギンは破壊されて塵になっていく。

――えっ? なにが起きた、今の変な声は……。

「痛いじゃんかよー、なにすんねん!」

(著作:Jiraiya/ 編集:アヒッル)

en_US