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恋とAIと

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3話「恋でもAIでも」 (メイ:著)
「あの…ニーナさん…。」  沈黙を切り裂いたのは、レイジだった。いつの間にかうなだれ気味になっていた姿勢をピシッと整え、やや震えた声色で、ニーナに話しかけたのだ。 「はい、なんでしょう?」  ニーナは、ぼんやりと海を眺めていた視線を上げると、隣に座るレイジの方へ体を向け、じっとその目を見つめた。 「えっと…その…メタバース上の恋愛…について、どうお考えですか…?」 「メタバース上の…恋愛…ですか?」 「は、はい。変なことを聞いているのは自分でも分かっているんですが、最近ちょっとその、メタバースの中で出会った人に対して恋愛感情を持つことが、いいのか悪いのか…みたいなことを、悩んでいる…というか悩んでいた?…みたいな感じでして、いや、悪いことはないんですけど!」  しどろもどろになりながら、レイジは何とか自分の頭の中にある思いを整理し、一つずつ伝えようとしていた。ニーナはというと、頬に手を当てて、深く考え込むように口を結んでいる。 「…えっとえっと、最終的に僕は、相手とどこで出会おうと、相手にどんな背景があろうと、好きになったんなら何も難しいことは考える必要はないんじゃないかなって、思ったんです。そして、その人と仲良くなりたいって思うことは、ごくごく自然なことなんじゃないかなって、そういう結論に至ってですね…。」  レイジがなんとか最後まで話し終えると、そのタイミングを伺っていたのか、ニーナが再び視線を上げて、レイジの目をじっと見つめ直した。 「…レイジさん…。」 「は、はい!」 「その…すみません、私、そういうのよく分からないというか…恋愛とかには疎いもので、一生懸命考えてみたんですけど…レイジさんが満足するような考え方は、私の中にはない…かもしれません。」 「そ、そうですか…いや、ホント急にわけの分からないことを言って、申し訳ないです!」 「い、いえいえ、謝らないでください!…私って、本当に薄っぺらくて、面白みがないんです…。」 「…ニーナさん?」  それからニーナは、少しだけ肩を落として、ゆっくりと自分について語り始めた。 「…私ね、誰かと会話をしている時でも、当たり障りのない内容しか返せないんです。気の利いたことも、面白いことも言えない…。だから、一対一で喋るのって、実はあんまり得意じゃなくて…会話をしていても、『ああ、この人も、私と話すより他のことをしたい…って思ってるんだろうな』って、そう感じちゃうんです。」…

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2話「見えるもの、見えないもの」 (メイ:著)
「…やっぱり、メイもそう思う…?」 「その『そう思う』がどんな意味なのかにもよりますが、文字通り、サポートAIみたいに適切なサポートをする方だな、とは思います。」 「そっか…そうだよね…。」  レイジは、何かを考え込むように俯き、また深いため息をついた。 「その後も何回か、数人での集まりの時に話したことがあるんだけどさ、何ていうか彼女…当たり障りのないことしか言わない…っていうか、自分のことも全然話さないから、なんか…人間味が薄い…って感じることもあって…。もしかしたら、本当にAIなんじゃないかなって…。」 「…まさか、それが悩みのタネ、ですか?自分が惚れた相手が、AIだったらどうしよう…って。」 「…うん。ほら、僕たち人間のアバターと、メイみたいなサポートAIのデザインって、少し違うでしょ?」 「ええ、私たちは、日本のアニメから着想を得たデザインで描かれているので。」 「だけどさ、人間と同じアバターをしたAIも一定数いる…って話を聞いたことがあるんだ。僕たち初心者が、自然にメタバース上に溶け込めるように、街に溶け込んで生活してる…って。」 「確かに、公式に発表されているわけではありませんが、その類の噂は比較的有名のようですね。」 「それを聞いて、余計にニーナさんはAIなんじゃないかって思えてきちゃって…メタバース上で出会った相手を好きになる…ってのも初めての経験だし、それに加えて相手がAIだったら…って、色々考えこんじゃってたんだ…。」 「そうですか…そんな悩みをAIに相談してる時点でちょっとデリカシーに欠けるところがありますので、気をつけましょうね。」 「ああ、それはごめん!」 「それはそうと、相手がAIかどうかなんて、一発で分かるじゃないですか。『やぁニーナ。君ってAI?』って直接聞けばいいんですよ。」 「そんなこと聞けるわけないだろ!違ったら物凄く失礼な感じになるじゃん!」 「そうですか?変に気を使いながらこっそり詮索する方が、何倍も失礼な気がしますが…。人間の思考は、未だに理解しきれない部分がありますね。」 「そんなこと言われても、直接聞くなんてできないよ…。」 「…仮にニーナさんがアバターの外見をしたAIだとして、そもそも、AIを好きになることの何が問題なんですか?」…

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1話「風は、ここにも吹いている」 (メイ:著)
心地のいい日差しに照らされた、新緑の草原。一本の大きな木が作りだす木陰には、爽やかな風が吹いている。 「はぁ…。」  木に寄り掛かり、さわさわと揺れる木漏れ日に包まれながら、その男は、この場所に似つかわしくない、重たいため息をついていた。 「…何か悩みでも?考え過ぎによる慢性的なストレス負荷は、心身の不調に直結しますよ、レイジ。」 「ああ…そう言うのじゃないから…大丈夫だよ、メイ。心配してくれてありがとう。」  レイジ、と呼ばれた男は、そう言葉を返しながらも、すぐにまた深いため息をつく。それを見たメイ、と言う名の女は、何やら頭の中で思考をまとめるように、間をおいてから口を開いた。 「…そういうの、巷では『察してちゃん』って言うらしいですよ。人に嫌われる性格の代表格です。」  豊かな自然の中で、男女が言葉を交わす。一方が悩んでいるようで、もう一方は心配しているようだ。地球上のどんな国や地域でも見られる、いわばごく普通の光景だが、このやり取りは、地球上ではないある場所で行われていた。 そう、ここは仮想現実が作り出した世界、メタバースの中だ。 「えぇ!?いや、別に何かを察して欲しいとかじゃないから!っていうか、そんな言葉まで知ってるの?」 「もちろんです。古語から新語·流行語まで、現実社会のありとあらゆる言葉は、全て学習していますから。」 「そ、そうなんだ…それじゃあ、僕とのこの会話も、その学習によって成立してるってことだよね?」 「はい。多種多様な人間による様々な性格や思考、会話や非言語コミュニケーションのパターンから算出して、最も適した言葉を選択しています。当メタバースのチュートリアルで、ご説明申し上げたはずですが?」 「あ、なんか面倒だったから、あまり聞いてなかったんだよね…アハハ…。」 「まったく…レイジは本当にものぐさでぐうたらな怠け者ですね。」 「いや、そこまで酷くないでしょ!それに、その毒舌は言葉のチョイス間違ってない!?」 「いえ、レイジのような、ちょっとイジメられたい願望を持つ男性には、このくらいキツい言いまわしにした方がいいと、私の中のAIが。」 「ち、違うから!大体、どうして僕がそんな願望持ってるなんて分かるんだよ!」…
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