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类别: 綻びの先の光

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綻びの先の光

綻びの先の光

Chapter 1
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Episode 1 「理想郷」
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by (根本鈴子:著)
 僕達の住んでいる世界は、平和で、争いらしい争いのない楽しい世界だ。  それが当たり前とされたのは、どうやら僕の生まれる前らしくて。  人々はその世界のことを、XANAメタバース……、理想郷と呼んでいる。    朝起きたら、自分の好きな姿になって、好きなものを食べて、好きに勉強する。  そんな当たり前なことを、幸せと言っている人達の意味が、僕には理解出来なかった。  だって、生まれた時からその幸せの中にいたから、当然のことだったんだ。  でもそれは、第二世代だから、らしい。  第一世代からすると、この世界に来るまで、ネガティブな世界で大変な思いをしたらしい。  地球という世界が、終わりに向かって行くというのを、肌で感じていたのだと第一世代の人達は皆よく口にする。  苦しみから解き放たれるために、理想郷たるXANAメタバースが作られ、またそのポジティブな世界というものに行くためのシミュレーションをされていたのだとか。  今、世界としてはネガティブな世界とXANAメタバースの世界とは分断されているそうだ……。  でもそれを確かめるには、僕には勇気がなかった。  今ある幸せを、何故わざわざ不幸に向かうようにしなければならないのか。  中には、不幸を知ることで幸せを噛みしめるという意味の分からない人もいるけれど……。僕は、そうはなりたくなかったな。    だけど何でだろう。僕は世界を知らなければいけないようになっていた。  そう、世界が決めていたんだ。…

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Chapter 1
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Episode 2 「綻び」
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by (根本鈴子:著)
「春花、身体は大丈夫か……? また、メタバース?」  僕はそう言って春花の白くて細い身体を見た。  春花は昔のVR関係のゲームをする時に使うヘッドセットを使って必死に機械を通したその先の世界を楽しんでいた。 「だって、啓。このメタバースなら、この間違いだらけの世界を放って、夢を見ていられるよ? あなたと一緒に、世界を歩いていける」 「でもそれは……」 「この世界に、残らせちゃったの、ごめんね……。私の体がネガティブに捉えられて、行けなくなっちゃって、それに付き合ってくれてるんだもん……。本当なら、あなたはアセンション後の平行世界の住人なのに」 「大丈夫。アセンション後の世界はその世界で独自に住人が作られて、同じように生活していくから」  これはその頃よく言われていたものだった。  何かにつけてすぐアセンション。それが訪れることは確定していたのだから。    ふと、目の奥に映像が見えた。  メタバース内の僕、そしてメタバース内のハルカの姿。  こっちの世界の春花……。  そして理解した。  こっちの春花から、ハルカを取り戻し、アセンション後の世界に連れ戻さなければならないと、アセンション後の世界のハルカが消えてしまうということを。 しかし同時に、僕は僕として、アセンション前の世界とアセンション後の世界の僕の存在が混じり合っていったのだ。  僕は春花とハルカを助け、そしてその全てが終わったら僕自身もそれぞれの世界に戻らなければならない。  だが、どうしたらいいのだろう。…

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Chapter 1
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Episode 3 「帰還」
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by (根本鈴子:著)
 僕達が目を覚ますと、いつものXANAメタバースの世界だった。  美しい花々、水面、空……。 「おはようございます。ケイさん。ハルカ様」  僕のAIがそう言って僕達を起こす。  そしてハルカのAIも僕のAIの隣に立っていた。 「おはようございます。ハルカさん。ケイ様」  ここは……タウンか。そう言えば大規模な更新があったような気がしたな。  あとでハルカと回って見てみよう。 「ハルカ、ハルカ……」  僕はハルカを起こす。ハルカはいつものアバターの姿で、とても安心した……。  でも、ハルカは目を覚まさない。  AIに僕は尋ねる。 「ハルカはどうしたの?」  そうすると、AIはにこりと微笑んでこう言うんだ。 「少々、データが壊れているのかもしれません。修理に出しますか?」  壊れたら直せばいい。  それが、この世界での常識……。  AIも似たようなもので、アップデートの度に修理に出してうっかり新型に変わって……ということを期待する人もいる。でもそれはまずありえないため、噂にすらならなかった。…

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Chapter 1
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Episode 4 「訪れる日々」
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by (根本鈴子:著)
「ケイ、この後どこに行こう。第二世代のアバターに新しいアイテムが出たみたいなんだけれど……」  ハルカがそう言うものだから、僕は頷いてこう言う。 「ハルカが行きたいところに行こうか」  大好きな人が行きたいと言うのだから、アセンション前のネガティブな世界はお断りだけれど、そういう世界ではないのであれば大体付き合うよ。  だって僕達、付き合っているからね。  AIでさえも認めざるを得ないくらい、僕達は素晴らしい恋人関係なんだものね。    結局その日は、いろいろなところを回っていたものの、ピンとくるところがなかったのか、ぐるぐると似たようなところを回っていた。  でも、それでも収穫があった。ハルカの好みというものに触れることが出来たのだ。  やはり好みに合ったところでなければ行きたいなどとは思わないだろうから、似たようなところに行くのはハルカの好みを知ることに繋がったのだ。 「ハルカ、素敵な趣味をしているね」 「……もう少し、私の趣味は違うんだけれどもなぁ。細かいところが違う」  少しばかり、文句もあったけれど、それでも嬉しい日だった。  ハルカは壊れていなかったし、またたくさん、一緒の時間を過ごせるのだから。    そしてその日以降、世界の綻びなどという噂は一切聞かなくなった。  世界はどうやら完全なものになったようだ。  …
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