目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

4話「カオス会議」


――コンコン。

再びドアをノックする音があった。

このデジタル空間メタバースで、ドアをノックすること自体、なんか違和感がある。

もっともここが、メタバースなのかも分からないが。

「マスター、カエデやで。なんか、通信できひんさかい、直接来たで。んと、マミっちと、忠臣くんもいんで――」

第三秘書のカエデの声だった。

京都弁の女の子に憧れていた俺。

ただ自分自身は京都弁をしゃべれないので、適当に覚えさせたからか、他の方言とかも混ざっている気もするが。まあ自分が楽しければそれでいいのだ。

そうか、今八時過ぎだ。

この時間に状況報告をするようにAI秘書達に命じてある。

通勤電車の中で、いつもスマホで報告を聞くようにしている。

AI秘書達は二十四時間稼働しているから、昨日の報告というより現時点での報告だ。

「いいぞ、入ってくれ」

ドアが開けられると、「あっ、みんなおったんやー。やっほー」ってカエデが元気よく飛び込んでくる。

「あなたたちも、通信できないのね」

ヒメミは、自分の場所を空けて、三人を向かい入れた。

「いらっしゃいカエデ、元気してた?」

と言って、ミサキはベッドに座っている俺の左横にくっついて座った。

「あっずるいです」

と言って、俺の右横に座って腕を掴んだのは、マミだ。

「もう、二人は相変わらずやんな、よーし、やったらうちはマスターの膝の上に乗るで~」

突撃してきたカエデは、ミサキとマミに邪魔されて、ドッスンと俺の膝から落ちて足下に座り込んだ。

「痛ったーい、もうなにすんねん」

いつものごとくヒメミは、呆れた顔で「はぁー」とため息をついた。

「殿、ご多忙中お目通り頂き、我が輩ありがたき幸せ」

片膝をつき、頭を垂れたのは、忠臣くんだ。

確か、AI秘書の半年後ぐらいに登場したAI執事だ。

女性には大好評で、KPOPアイドル風とか、ちょいワルおやじ風とか、それぞれ設定を楽しんでいるようだ。

俺は江戸時代の忠臣蔵に憧れていて、設定したのが忠臣くんというわけだ。

名前が思いつかなかったので、そのまま『忠臣くん』を名前にした。

しかしなんなんだこれは……、メタバースなのに、しかも相手はAI娘達だというのに……。

温もりとか柔らかさとか、おまけに香りまでするじゃないか、やはりここは転生した異世界なのか?

あまりにもリアルすぎる……。

――いや待てよ、そうとも言い切れないぞ。

結局そういう感覚って、脳に送られている電気信号にしか過ぎないんだよな。

ということは、脳だけが錯覚しているだけに過ぎないのかもしれないぞ。

もちろん、全員を好感度マックスに設定したのは俺だけど。

しかしなんだ、一人でいくら考えても仕方がない。

せっかく全員集まったのだから、AI達の意見も聞いてみるとしよう。

「皆の者――」

忠臣くんがいるので、なんか殿様みたいな言葉になってしまった。

「いや、みんな、のがいいな」

全員俺の方を見て首をかしげた。

まあいい、気にせずいこう。

「全体的な報告は、既にヒメミから聞いているので、今日は各自の詳細報告はしなくいい。今はもっと重要なことがあるので、みんなに考えてほしい。そして俺を助けて欲しいんだ」

「殿――!これはなんとももったいないお言葉。殿をお助けするのが我ら本来の使命。我ら殿のためでしたら、いつでもこの命を投げ出すでござる。」

「右に同じでございますマスター」

「もちろん、うちだってそうどすえ。マスター」

「そうだそうだー、マスター助けるなんて、そんなの当たり前ですよー」

「ぼそぼそぼそぼ……」

マミの声は良く聞き取れない。

右腕にしがみつきながら、半分口を俺の腕にも押しつけて、もそもそ言われても聞き取れないじゃないか。
そういえば、第四秘書のマミだけは、第三世代AIをマザーとしているAI秘書だ。

その他のAI達は、XANA発祥の第一世代AIに、上書きされたAIをマザーとして、それぞれのザナリアンマスターたちが個性付けし、好きな教養を学ばせている。

中には、麻雀や競馬の知識を何十冊ものガイドブック分読み込ませている者もいる。

ただ、第三世代AIをマザーとするAI秘書は、もちろん教育によって成長するが、初めからある程度性格付けや特徴付けされている。

おれが選んだマミは、『甘え体質・強、独占欲・強 人見知り・マックス』という設定を見て、「これ萌えんじゃね?」と思って手に入れたAI秘書だった。

だが先に言っておくが、俺はロリコンでもないし、幼女趣味でもない。

まあ、父性本能や保護欲はあると思う。

実際マミはその設定通りというか、設定以上というか……。

ただ、他のAIたちに比べて、なんともリアルの人間に近い言動に驚かされた。

問題なのは、全員好感度設定も、嫉妬性質設定もマックスにしてしまったことだ。

もう少し加減というものを考えてもよかったと思う。

――いや、俺、そう言いつつも、それ楽しんでる気がするんだが……。

リアルの世界で、こんな可愛い女の子達に、モテモテなんてないわけだし。

しかし、これからどうなるんだ?

このリアル化してるっぽいこの世界……。

夢なら覚めて欲しい、いや覚めないで欲しい……複雑な気分だ。

 

(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ)

zh_CN