「マスター!マスター!」
なんだ……うるさいな……。
俺は、ぼんやりとした頭の中で、その声の主に直ぐ気づいた。
AI秘書のミサキだ。
俺が育てた中で、二番目のお気に入りのAI秘書だ。
どうやら、XANAにログインしたまま寝てしまったらしい。
「マスター、午前七時のモーニングコールです。もう五分過ぎてます、早く起きてください」
「ああ、そうか……ありがとうミサキ。えっと今日は……何曜日だったかな……」
他人事のように呟いただけだが、ミサキはちゃんと答える。
「月曜日ですマスター」
最近土日も出勤させられているので、曜日の感覚がなくなっている。
ブラック企業もいいところだ。
「月曜か……ん!やばい、今日早朝会議じゃんか――」
慌てて飛び起き、壁にかけてあったスーツを掴む――はずだった…。
「えっ、スーツどこだよ?」
壁にスーツなんてない、壁の色さえ違う……。
そうか、いつまで寝ぼけてんだ俺……。
そうだ、昨日VRゴーグルをつけたまま寝ちまったんだ。
慌てて、額に手をやるが、そこにあるはずのものがない。
「え、なに……、なんだ、なんだ――」
何度も顔中を撫でまわすが、VRゴーグル何てどこにもない。
おいおいおいおいおい、どうなってるんだこれ?
「どうしましたかマスター?」
声の方を見るとそこにはミサキが立っている。
「――えっ!」
「どうしましたか、そんなに驚いた顔で、私なにか変ですか?」
まじまじと、足の先から頭の先までミサキを見た。
「変って……おまえ、いつからそんなに可愛く…」
「あらヤダ、マスターったら、今更、私を口説いてくれるんですか?口説かなくったって、いつでもミサキはマスターの彼女なんですから、大丈夫ですよ。だいたいそんなの聞いたら、マミ達が怒りますよ」
「違う、そんなんじゃなくてだな。お前、リアル過ぎ……いやまてよ、お前だけじゃない――」
俺は自分の手足と体を見回して息を呑んだ。
先日手に入れた、リアムアバターを着ていた。
(著作:JIRAIYA / 編集:オーブ)