「キャーアァァァァァ――!」
うぐっ――ヤバ、これ思っていた以上に怖いじゃん!
自分のランドにXANAビルダーで作った遊園地のジェットコースターだ。
マミが遊びたいというから、一緒にコースを設計して設置した。
俺はパソコン上で製作しただけで、VRゴーグルで体験したのは初めてだった。
特に八十度のキリモミ落下は、おしりがムズムズして心臓が痒くなった。
「ねえマスター! もう一回、もう一回!」
「えっ……」
俺は一回で充分だったが、マミは相当気に入ったらしく、五回も乗る羽目になった。
六回目はさすがに無理だったので、ヒメミを呼んで代わってもらった。
その間、俺はXANAからログアウトして一時間ほど休息した。
「マスター、勘弁してください。十回も乗せられたんですよ。さすがにもうスタミナ切れです」
そうか……ジェットコースターでスタミナって減るのか。
「あはっ……ヒメミすまん。そうだマミ、お化け屋敷はどうだ?」
「お化け屋敷……。うーん、うーん……マスターとだったらどこでもいい」
「そっ、そっか、じゃあ行こう」
ふう、助かった、もうジェットコースター系は勘弁だからなあ。
「あの、マスター……」
「ん? どうしたヒメミ」
「私も一緒に行っていいですか?」
「えっ、ヒメミも? うーん、別にいいけど、なあマミ?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、お供します」
「ギャー、やだー、やだー、おばけ嫌い、やだー、出るー、出るー」
「マミ、戻ることはできないから、目をつぶって手をつないでいれば大丈夫だから」
メタバースお化け屋敷は、普通のお化け屋敷よりもずっとリアルだった。
ミサキに設計させて、俺は配置しただけ。
PC画面上ではお化けを配置するだけだから、その怖さは分からなかったが……。
ちょっと、これは子供には刺激が強すぎたかもしれない。
あれ? でもマミの設定に、お化け怖いなんて項目あったかな……?
「ん?」
ヒメミがマミと反対側の俺の腕にしがみついてきた。
「えっ、まさかヒメミも怖いのか?」
「はい! すごく怖いです、マスター。だから私もエスコートしてくださいね」
「いや、ヒメミ、それ全然怖がっているように見えないんですけど……」
「そんなことないですよ、マスター。私だって怖いです。キャア」
……表情一つ変えず、抑揚無しで言われてもなあ。
なるほど、もともとそれが目的でついてきたのか。
結局二人とも、終始俺にしがみついていただけだった。
これってお化け屋敷の意味あったのか?
お化け屋敷を出てからも、二人ともしばらくそのままひっついていた。
「マスター、今日は魔法少女ソラシドちゃん来てないの?」
「えっ、うーんとどうだろう……ヒメミ分かるか?」
「今日はメイン会場での催しはありませんけど、XANAタウンで乃木丘三十八のイベントがありますね」
「えっ、そうなの!」
「はい。一緒に行きますか? そういえば、カエデが行きたいって言ってましたね」
「いや、それ俺も行きたいし」
「マミは、魔法少女ソラシドちゃんがいい!」
「マミ、たまにはマスターの好きなものも見に行きましょう、ねっ」
「うん……わかった」
「ヒメミ、チケット取れる?」
「はい、まだ空いてますね、四枚でいいですか?」
「うん、そうだな。ミサキは今デュエルに出ているから」
後で怒りそうだから、ミサキには内緒にしておかないとな……。
遊園地からXANAタウンまでは遠かったので、ワープポイントから移動した。
XANAタウンに着くと、カエデが待っていた。
「ずっこおすマスター。三人で遊園地行っとったんどすって!」
「まあまあ、ヒメミはマミのおもり役に呼んだだけだから、俺はその時いなかったし」
「次はうちとマスターで、忍者屋敷デートどすさかいね」
忍者屋敷でデートが成立するのか……。
「わっ、分かった、今度ね」
「やったあー」
「マミも、マミも行くー」
「だめ、マミは遊園地行ったやろう」
「やだあ、マミも行くー」
「マミちゃん、忍者屋敷はとっても怖いのよー、子供が行ったら手裏剣で刺されてまうんやさかい」
カエデは、お姉さん口調になった。
「そうなのマスター?」
「ん? うーん……うーん、そうなの……かな」
「ほらマミちゃん、分かったやろう? また今度、遊園地行こうなぁ」
いや、俺、今同意してないけど……。
「……うん、怖いのは嫌」
「おおおお、すごいぞ! アバターが、アバターが……」
俺はアバターライブをなめていたが、乃木丘三十八のアバターは、ほんとに実物そっくりだったのだ。
「凄い可愛いおすけど、うちには負けるで。なあ、マスター?」
「えっ、あっ、うっ、そうだな。うん、カエデの方が可愛いなあ」
「どすなぁー、うふっ」
「マミは? マミは、マスター?」
「うん、もちろんマミもかわいいぞ」
「やったあ」
「乃木丘メンバーの全身を百二十台のカメラで撮影して、3Dでスキャニングして作ったんだそうですよ」
ヒメミはすました顔で無表情で言った。
「そうなんだ、凄い進化してるんだなあ……ヒッ、ヒメミの方が美人だけどな」
フォローしたつもりだったが、ヒメミは無反応だった。
「マスターもやったらええのに」
「えっ……」
想像しただけで自分で引いた。
ただのおっさんのリアルアバター作ってもなあ……。
――はっ!
「あっ! マスターおはようございます」
ヒメミは、俺が目を覚ましたことにいち早く気づいた。
「今、何時だ?」
「朝の四時を回ったところですね……」
まじかぁー!
「どんだけ寝ていたんだ?」
「十時間ぐらいだと思います」
「そんなにか……」
現実世界では寝ても七時間程度だったのに、なぜここではこんなに寝てしまうのか。
身体は全く使っていないのに、そんなに脳が疲労するものなのか……。
(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ)