それから数週間後。
弥生は正式にXANAで着せ替えアイテムの制作を依頼されて、しばらくログインできない日々を送っている。
家族や専門学校にも就職が決まったことを報告すると、大変喜ばれた。
専門学校を卒業するまではとりあえず、XANAの公式着せ替えアイテムショップに制作したアイテムを販売し続けることになった。
XANAで個人の店を持てるかどうかは、これからの努力次第だと言われている。
今日も部屋の中でたくさんのコスプレ雑誌と動物の写真集に目を通しながら、作業を続けていた。
「ううっ……! 納品日までは時間があるけど、早く終わらせて次に取り掛かりたいから頑張らないと……」
目の下にクマを作りながらも頑張る理由は数日前、スマホに送られてきた一通のメールにある。
送り主はカラヴァッジョのテトからで、内容はXANAで再びイベントをはじめる日が決まったとの知らせと、またラビとコラボイベントをしたいという依頼だった。
カラヴァッジョ復活イベントはSNSでも話題となり、ネットニュースにまでなったほどだ。
テトはどうやらそのイベントで、カラヴァッジョのクリエイターが障害者であることを打ち明けるらしい。
ネットでは荒れるかもしれないし、偏見や差別の言葉が出てくるかもしれない。
それでも彼らは、大きな一歩を踏み出す勇気を出すのだ。
「わたしも負けてらんないなぁ」
カラヴァッジョの作品は、見ている人に力を与えてくれる。
どんな困難でも自分の才能と努力で乗り越えたい――といった無言の意志はしかし、伝染力が強いのだ。
「全ての人々に感動を――ってのは難しいけれど、一部の人達の偏見や差別を思い浮かばせることができないぐらいの作品でねじ伏せるのは最高よね?」
ニヤッと笑った弥生は、新たな野望の為に今日も人々が喜ぶような着せ替えアイテムを創り続ける。
【終わり】