「マスター、AIパネルとフレンドリストパネルを確認してください」
そうだ! 生き残っていればそれで分かるじゃないか。
意識をAI秘書管理パネルに集中させる。
プン――。
すぐにポップアップが浮かび、ほっとする。
カエデも忠臣君も健在だ。
その証拠は、名前が白くはっきりしているということだ。
消滅したりオブロ内にいなければ、薄いグレーのはずだ。
だが、もちろん通信はできないし、ステータスも表示されない。
フレンドリストパネルをギルトユニオンの絞り込みで意識する。
プン――。
こちらのパネルも、ゆっきーさん、ボタモチさん……あっ!
ダブルティムさん、たもつさんもいるじゃんか!
どうやらオブロ内にいるようだ。
もちろん場所と状態は分からない。
ボタモチさんのように捕らわれている可能性もある。
「ヒメミ、大丈夫だ、全員オブロで生きていることは確かだ」
「はい、私も確認しています」
The list of masters is also shared with the AI secretaries.
I see, Himemi had already noticed and confirmed it, as expected of a calm and composed Himemi.
“But Master, it doesn’t mean that you have succeeded in defeating the boss.”
“Eh, what is it?”
“There is a non-zero possibility that it failed and was captured somewhere, or that it was sent outside of Oblo.”
“Is that so?”
“However, up to the 2nd floor, we were able to act as a party of 4, but this 3rd floor is restricted to a single party…”
“Ah, so that’s what it is. It’s possible that you went to another three floors in a parallel world.”
“Yes, Master, that’s right.”
“Then we can’t just wait here for Kaede and the others.”
“Yes, Master. Right now, there is only one option.
“Understood. These four have no choice but to capture the boss of the third floor.”
“Yes, master”
“Misaki, Mami, it may be difficult, but let’s go.”
“Yes, Master. Misaki will accompany you wherever you go.”
“Mami, it’s always good to be with Master!”
They are really cute girls who make me smile a little.
Make sure everyone’s status is perfect in front of the boss room.
After coming up to the 3rd floor, I feel nervous in the party’s first boss fight.
Set Metal Genesis on Himemi’s shield.
Make a formation with me on the right side of the double door, Misaki on the left, Himemi in front, and Mami straddling Sen-chan behind him.
It’s regrettable that Kaede and Chushin-kun aren’t here, but it’s useless to think about it now.
I activate All Boost, which increases the maximum value of all stats acquired by leveling up by 20%.
Yeah, it feels great.
“Thank you, Master.”
“Master, thank you.”
“Master, thank you.”
“You guys don’t have to say it.”
In addition, there were two bird skills acquired by leveling up.
One is the automatic mana recovery skill, auto mana recharge.
This is a single-target skill, but it automatically recovers 5% of mana every minute for 30 minutes.
If you put this on Mami, you should be able to avoid Mami running out of mana to some extent.
The other is a complete self-defense skill, Perfect Defense.
This can only be used on yourself, but it nullifies the enemy’s physical attack for one time.
With this, I can also be a shield, albeit temporarily.
“Misaki, let’s open it at the same time.”
“Yes, master”
“Three, two, one, go!”
When the double doors were opened, Himemi jumped in first, holding up her shield and taking a defensive stance.
I advanced to Himemi’s 4 o’clock direction, and Misaki entered in the 8 o’clock direction while pulling her bow.
A little later, Mami enters Himemi’s six o’clock direction.
Bang–!
The door closed as soon as Mami entered.
It’s a big hole, but I can’t see the boss in sight.
“What… isn’t there?”
“superior–!”
By the time Misaki shouted, something black had swooped down like an arrow.
– Pishi!
Misaki shot an arrow.
It hits, but its momentum doesn’t stop.
When it descended in front of me, it spread its wings and slowed down, sticking out its legs like an eagle.
It looks like a giant crow, probably five meters in length.
Its sharp claws are big enough to grab a person.
“It’s a gargoyle.”
Misaki tells me.
“Provocation—!”
Himemi activated a skill to make the target of the attack turn towards herself.
Apparently, it was targeting Misaki who had attacked, and changed the angle a little and rushed into Himemi.
Gasha!
Himemi’s shield and gargoyle’s claws collided.
— Zuzu.
Himemi catches it, but slides back on the floor to Mami’s place.
The gargoyle spread its wings wide and rose from the stall, albeit heavily.
“Are you okay, Himemi!”
“Yes, Master. No problem.”
Check gargoyle status.
The hit between Misaki’s arrow and Himemi’s HP was reduced to about 5%.
On the other hand, Himemi has decreased by nearly 30%.
Himemi can only endure it for about two more times.
Gargoyles, on the other hand, can receive 20 attacks from the two of them.
Probably, about 2% of the damage was done by Misaki’s arrows, so it would be necessary to hit the arrows fifty times.
“Misaki, how many arrows do you have?”
「あと、二十四本です」
三階層で手に入れた矢は、そう多くないようだ。
ガーゴイルは上空を旋回し、再び攻撃のチャンスを狙っている。
このホールは、壁にあるたいまつで床と壁は見える。
だが、その光が届く範囲では天井まで見えない。
相当高さがあると考えられる。
二階層から落ちたときの傾斜路が長かったのもそのせいか。
「ミサキ、旋回中でも矢を当てられるか?」
「自動追尾スキルを獲得しているので当たるはずです」
「わかった……じゃあ火矢を撃ってくれ、やつの耐性を確認しよう」
「はい、マスター」
「ヒメミ、すまんがもう一度堪えてくれ」
「はい、マスター」
「あっ、待った。どうせならファイヤージェネシスで攻撃力を最大にしよう」
使わなくても、ミサキはスキルで火矢を撃てるレベルだが、一矢たりとも無駄にすべきではない。
「はい、マスター、この辺にお願いします」
ミサキが弓を自分の頭上七十度方向に引いて見せた。
俺は、その方向にファイヤージェネシスをセットする。
「撃ちます――」
――ビュッ。
ファイヤージェネシスを通過した火矢は、火炎の勢いを増しガーゴイルに向かって飛ぶ。
ガーゴイルは、火矢を認識すると、旋回を止め、急降下する。
火矢は当たらず素通りするが、ターンして、急降下するガーゴイルを追尾する。
ガーゴイルは気づいていないのか、無視したのか分からないが、一直線で向かってくる。
「挑発――」
ヒメミが再び自分に攻撃を向けさせる。
――ポッ。
ほぼ同時に、火矢がガーゴイルの背に命中するが、延焼はしない。
ジェネシスで増加させた分、ガーゴイルへのダメージは、ヒメミと合わせて十パーセントほどになった。
「火炎耐性はあるようだな、次は氷結で試すぞ」
「はい、マスター」
「マミ、ヒメミを単独回復。ウォータージェネシスセット、プラントジェネシスセット」
「はい、マスター。ヒール!」
四十パーセントほどになっていたヒメミのHPが九十パーセントを超える。
「凄いじゃないか、マミ! 一回で、ほぼ五十パーセント回復じゃん」
「やった~、マスターに褒められたぁ」
「ありがとう、マミ」
「ナイス、マミッち」
マミのマナ消費も三十パーセントと激しいが、マナ自動回復がかかっているからゼロになる心配はない。
「マスター、マミね、ヒメちゃんにもらったフルマナポーション持ってるよ」
「おぉ、そうだったのか、了解。それは安心だ」
「あっ、ちょっと待て、ミサキは?」
「私は持ってません」
ミサキのマナ消費が三十パーセントだぞ、多すぎないか。
火炎と追尾の両方のスキルを使っているせいか……。
俺のマナの消費が痛いが、自動回復かけておくべきだな。
「オートマナリチャージ」
「ありがとうございます、マスター」
「よし、ミサキ、射撃開始」
「はい」
――ビュッ!
今度は、旋回中のガーゴイルは矢を避けようとしたのか、旋回を止めて降下した後に上昇した。
しかし、ミサキの放った矢は、自動追尾を続ける。
矢の方が明らかに速度が速く、右の翼に直撃して貫通。
グルルルルゥ――!
明らかに火矢よりダメージがあったようだ。
十パーセントほど、HPが減っていた。
「よし、これで二十パーセント削ったぞ。ミサキもう一撃だ」
ミサキのマナは四十パーセントしか残っていないが、今はこれしかない。
「マスター、提案があります」
「ん?」
「レベルアップで獲得した一斉射という、三本の矢を同時に放つスキルがあります」
「えっ、三本同時――! でもマナは?」
「残りの四十パーセントをほぼ使い切りますが、一本ずつより効率的です」
「なるほど、それでいこう」
ガルルルルー。
ガーゴイルは急上昇し、急降下してきた。
かなり苛立っているようだ。
――ビューン!
ミサキの三本の矢が急降下中のガーゴイルに放たれた。
急降下中に避けることはできないと思うが、その気もないらしく一直線に突っ込んでくる。
グルルルルゥ――!
ミサキの氷結矢が命中すると痛そうな声を発した。
狙いどおり、HPの三十パーセントを削り、ガーゴイルのHPは残り五十パーセントになる。
しかし、ガーゴイルはまったく怯むことなく突っ込んできた。
「挑発――」
ミサキに向かっていたガーゴイルが微かにずれた。
「挑発――」
ヒメミが再度、挑発スキルを使ったが、怒り狂ったガーゴイルへの効果は僅かだった。
左足の爪はヒメミの盾がカードしたが、右足の方がミサキに突っ込んだ。
「キャッ!」
――ドン!
ミサキは入り口まで吹っ飛ばされ、扉に激突した。
「ミサキ――! くそっ、マミ、ヒールだ――!」
ミサキのHPがごっそり削られたのが分かる。
「ヒール!」
ガーゴイルはミサキを吹き飛ばしただけでは気が済まず、その右足のカギ爪でミサキに掴みかかった。
「魅了――」
俺はとっさに魅了スキルを発動し、一瞬だけガーゴイルの動きが止まった。
「挑発――挑発――挑発――!」
ヒメミはスキルを連打しながら、ガーゴイルの背を切りつける。
マミのヒールでミサキのHPは五十パーセントまで戻すが、スタミナが二十パーセントを割っている。
「うぐぅっ」
ガーゴイルの右足がミサキの胴を掴んで、ミサキが苦しそうな声を上げた。
「ヒール――!」
十パーセントを割りそうになったHPを、マミがまた四十パーセントほどまで引き戻す。
「挑発――挑発――!」
「ノックバック!」
ヒメミが盾をガーゴイルの背に叩きつける。
さすがのガーゴイルも背後からの度重なる攻撃に、掴んでいたミサキを離した。
「魅了――」
「挑発――挑発――!」
最後のヒメミのスキルはマナ切れで発動しなかったが、ようやくガーゴイルはヒメミの方に向きを変えた。
「こっちに来なさい! あんたの相手は私よ――」
盾を構えながら後退するヒメミに、もう飛ぼうともしないガーゴイルは、そのまま足で駆けて追いかける。
「ミサキ、大丈夫か――」
ミサキに駆け寄って抱き起こす。
「はい、マスターなんとか……」
ステータス確認、マナ一パーセント、スタミナ十パーセント、HP三十パーセント。
次、攻撃受けたらヤバい――!
「動くな、ミサキ、ここで回復に努めろ」
マミのマナを確認する、ほぼゼロだ。
MMOものでは、ヒールに敵視が注がれることが多いが、マミには全く反応していない。
どうもガーゴイルは、アクティブな攻撃者への敵視が強い設定のようだ。
どうする……マミにポーション飲ませるか……それともミサキに。
回復のためのマナか、それとも攻撃のためのマナか……。
即座の判断ができない。
Damn it, it’s my fault—misjudgment!
Even a single arrow was highly hostile, so it seems like you’d be able to consider what would happen if you fired three arrows!
Check Himemi’s status.
Zero mana, fifty percent stamina, fifty percent HP.
Check your status.
20% mana, 90% stamina, 100% HP.
If you use charm again, you’ll run out of mana.
Moreover, my charm skill isn’t very useful.
That’s right, this one is level 20, he’s level 40.
――Damn, what are you going to do?
It takes too much time to sharpen the gargoyle with Himemi’s attack power.
Himemi will run out of strength first… then I’ll restore Misaki’s mana…
I can kill him with two salvos… but I can’t afford a second shot.
The hostility is too high, and the provocation doesn’t work…or rather, Himemi doesn’t have any mana anymore.
What do I do, what do I do, think, think, do something, do something.
“Master, Himemi-chan――!”
(Author: Jiraiya/ Edit: Orb & Maru)