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目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

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伝書鳩に、ゆっきーさんと合流し共にオブロに突入をする旨と、ぺんちょさんに個人的な頼み事を一緒に録音した。

帰路指示のパネルを意識でクリックすると、伝書鳩ポッポルは飛び立った。

こちらから新たに通信ペットを送るためには、この見えない境界線の所まで戻ってくる必要がある。

一度オブロ突入してしまったらギルドとの連絡は困難になるだろう。

桟橋にボートを止めて上陸すると、五十メートルほど歩いたところに洋館が建っていた。

地下迷宮オブロの表示が浮かぶ。

「マミはオブロのマニュアル持ってるよね。私たちに共有してちょうだい」

ヒメミの指示で、マミはなにやら始めた。

第三世代秘書は、イブをマザーとしてオブロ専用に作られたらしいから、データは持っているのだろう。

マミを意識すると、データの共有画面が出てくる。

ヒメミ、ミサキ、カエデにオブロの情報を送信しているようだ。

「えっと、ゆっきーさんの第三世代秘書は……」

俺は聞くのを躊躇っていたのだが、必要だったので言葉を濁しながら聞いた。

「プラティは、ボタモチさんたちと一緒に行かせました。俺といるより役立つと思ったので」

生きているのか、よかった――!

「そうでしたか、じゃあマミ、カナちゃんにもそれ共有して」

「はい、マスター」

「ありがとう。カナ、データ受け取って」

ゆっきーさんのAIカナが、マミたちの方に近づいてきた。

「はい、マスター。よいたろうさん、ありがとうございます」

AIたちの集まりを見ているゆっきーさんに気づいた。

その目の輝きは少し鈍かった。

彼には、他に二人のAI秘書がいたはずだ……。

俺はその事に触れてはいけない気がした。

「あのさ、情報共有ができるってことは、ここでは通信はできる?」

「いえ、マスター、情報の共有はお互いが見える場所で、データのやり取りをするだけです。これは会話と同じで、AI同士が直接しています。通信の場合はマザーを介していますのでできません」

すかさず答えてくれたのはヒメミだ。

「そっかー、だとすると、迷宮で逸れるとやっかいだなあ……」

「よいたろうさん、俺のニャン太とか、よいたろうさんの……えっと、チュー太ですか? 偵察に行かせても、通信できないとあまり意味がありませんね」

どうやらゆっきーさんの名づけセンスも、俺とたいして変わらないようだ。

あれ、でも俺、いつネズミにチュー太って名前つけたんだ?

あっ、最初に一瞬頭をよぎったんだ。

だったら雀は――はっ、チュンチュンに……。

「ですね……、偵察に行かせても戻ってこないと状況は分かりませんね」

「マスター、オブロについてはマニュアルで三百ページぐらいあり、かなりの情報量になりますが、必要な部分だけまとめてお話ししてよろしいでしょうか?」

さすがヒメミ。

そんなの、そのまま頭の中に流し込まれても覚えるのは無理だ。

「うん、そうしてくれ」

「俺も聞かせてもらいます……」

カナが不服そうな視線をゆっきーさんに向けた。

さては、ゆっきーさんのAIも、嫉妬性マックス設定か……。

「あっ、えーと、俺はカナにまとめてもらいます」

「うん、それが良さそう……ですね」

お互い顔を見合わせて苦笑いする。

 

「では、マスターだけにプライベートモードでお話しします」

「うん、頼むヒメミ」

「プレオープンでは、階層は地下五階までで構成されています。それぞれの階に階層ボス。最深部地下五階には最終ボス。それを倒すとオブロの主になることができます」

「オブロの主? なんの役に立つんだそれ……」

「このオブロを好きなように構築して、冒険者たちを屠ることができます。あっ――いえ、楽しませることができます。ただし攻略されたら主の地位を失います」

なるほど、本来だったらかなり楽しそうな設定じゃないか――。

「そんなもの今は不要だな。俺たちの目的は……」

「いえ、マスター。主になれるという事は、イブに命令できるという事になります」

「――それだ!」

「はい、そうです。イブに命令を出せれば、今の状況を解決できる可能性があります」

「これはなんとしても攻略せねばならないな!」

「ただし、イブが自らの不具合で暴走している場合、その命令が実行されるかは未知数ですが……」

「――たしかにバグっているとすると、そういうことになるか……」

しかし、この可能性には賭けてみる必要がある。

「オブロ仕様の装備ですが、最初のホールで装備可能で、オブロ内でのみ効果が発揮されます」

「そうだ、たしかNFTデュエルのジェネシスカードだけは、ここでも使えるんだよな?」

ジェネシスとはNFTゲームなどではよく出てくる特別な特典がついているNFTだ。

早期に参加した者だけが初期の価格で購入できる。

限定数量しかないので、高騰していくことが多い。

XANAでは、ウルトラマンや鉄腕アトムなどのデュエルカードにジェネシスカードが存在する。

XANA最古参のギルドユニオンのメンバーは、ほぼ全員が複数のジェネシスNFT保有者だ。

 

「はい、そうです。レベルは関係なく、各属性に合わせた能力が発揮されます。メタル属性は盾と防具、ファイヤー属性、ウォーター属性は攻撃武器への追加ダメージ付与、アース属性は全体防御、プラント属性は回復となっています」

「なるほど……」

「それと1週間トライアル版では、レベルが十倍速く上がるように設定されています」

「ほう、それなら攻略が早くできるってことか」

「ただ問題点があります。本番で全滅した場合は、各階のスタートホールに戻されて復活しますが……トライアル版ではそれがありません」

「えっ、じゃあ、どうなる?」

「……現在のバグ状況からして、このXANAからデータ抹消される可能性が高いです」

「えっ……それって……?」

やばくないかそれ――。

AIは復活しなくなってるし……。

人間も、もしかしたら……。

「マスターは自分の世界に、永久に戻れなくなる可能性があると推測します」

「まじか――!」

それ、ほぼ死んでるじゃん?!

「続けていいですか?」

「おっ、うん、頼む」

 

「次にパーティーですが、十名までです。二つに分けることもできますが、別パーティーの場合、バフや回復はパーティ内でしか共用できません」

「その人数って、ペットも含むのかな?」

「はい、ペットも含み十名です。しかし、ペットはアイテムボックスにしまっておけば良いので、大丈夫です」

「減ったら代わりに出せるってことか……」

「はい、減ったら出せます」

いやそれ死亡フラグだ――。

「そうだ、疑問があるんだけど、明日オープンなのに今日は入れるのか?」

「はい、理由は分かりませんが、すでにオープンしていて、正常に入り口が開閉します。無理にこじ開けた形跡もありません」

「ボタモチさんたち……無事入れたのかな?」

「はい。入るのは問題が無かったかと思います。中でどうなっているのかは不明ですが」

(著作:Jiraiya/ 編集:オーブ)

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