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目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

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「えっ? 魔導士やってくるって、カエデどういうこと?」

「マスター、まあ見ててください! いいですよね?」

「いいけど、あまり危険なことはしないでくれよな」

「マスターにそんなん言われたら、キュンキュンしてまうわ」

「別に特別な意味じゃないぞ、みんな大事だからな」

ヒメミの背中がびくりと反応したので咄嗟にフォローを入れる。

「戻ってきたら、ギューしとくれやっしゃ!」

「そっ、それは……」

背中からでも、ヒメミの額に青筋が立ったのが想像できる。

「マスター、カエデだけなんてずるいです。次は私ですからね!」

「ミサキも頑張ってるから、分かってるから……」

「ほな行ってくるなぁ。忍法、隠密」

カエデの身体が薄くなった。

おそらくこれがステルススキルで、敵からは全く見えないのだろう。

うわっ、壁走れたのかよ――!

カエデは壁を走り登って、そのまま前線を越えてゴブリンたちの背後に消えた。

「ギャッ――!!」

どうやらステルス状態でゴブリン魔導士を攻撃しているようだ。

「凄いですね、カエデちゃん――!」

ゆっきーさんが、興奮してこっちをチラ見した。

「あっ、えー、まあ……ありがとうございます」

俺自身そんなことできるなんて知らなかったけど……。

ちょっと鼻が高くなった気がする。

カエデが魔導士を倒してくれているおかげで、飛んでくる火炎弾が減ってくる。

それでも既に二列目三列目は、HPが半分以下に削られている。

回復をかけたカナも、ゴブリン戦士の攻撃でまた五十パーセントを下回まわってきている。

いや、それ以上にヒメミがヤバい!

ヒメミには回復をかけていないので、既に三十パーセントほどになっている。

 

そして今気づいたのだが、スタミナの総量が減っている。

そうだ、入場前に使ったブーストアイテムの効果が消えたんだ。

つまり、スタミナは三十パーセント残っているが、数量としては減っている。

スタミナが切れてもダメージはないが、動く速度が半分になってしまうのはヤバい。

レベル1のバードには、スタミナブーストスキルはない。

飲食ブーストを使うしかないが、ブーストは回復ではないので、効果は少ないし、前衛が戦闘中に補給するのは困難だ。

ヒメミ単体のヒールをかけさせたいが……マナが心配だ。

ここは、個々の回復量を捨ててでも、全体ヒールをすべきかどうか。

悩んでいる間にも、全員のHPが削られている。

くそっ――早く決断しろ俺!

「マミ!」

「はい、マスター」

「全体回復できるな?」

「はい、できます!」

「パーティーヒール!」

セットしてあったプラントジェネシスに向けてマミが両手をかざす。

マミの両掌からでた光が、プラントジェネシス通過時に緑色に変わり、全体に広がった。

それぞれのHPゲージが上がっていく……。

おい、それだけかよ――!

みんな十パーセントほどしか上がらない。

一番HP割合が減っているヒメミは、結局三十パーセント強だ。

「マスター、ファイヤーの代わりに、ウォータージェネシスお願いします」

「了解、ミサキ」

ゴブリンの火炎耐性を考慮してのことだと理解する。

チェンジ、ウォータージェネシス。

本当はいちいち声に出す必要なく、意識するだけでできる。

だが自分の意識の確認とパーティー全員への告知になるので、あえて大声で言う。

これ、ベッドで俺が叫んでいるのを見ている人がいたら、さぞかし滑稽だろうなと一瞬想像した。

 

ミサキが、水色のウォータージェネシスに向けて矢を放つ。

放物線を描いて、三列目のゴブリン戦士の額を射抜く。

グギャー――!

叫んだのは、その後ろのゴブリン魔導士だった。
最初に矢を受けたゴブリンは悲鳴もなく倒れた。

そいつを貫通して、後ろのゴブリン魔導士の顔を射抜いたのだ。

どうやら貫通力が高く、氷結ダメージを与えているようだ。

射抜かれた周囲が凍り付いていた。

「いいぞミサキ――!」

「おおー、凄い貫通力だ、ミサキちゃん!」

ゆっきーさんも感嘆の声を上げた。

「はい、ありがとうございます。でもすみません、矢があと十二本しかありません――」

「くっ、そうか、了解」

矢を回収できないのが厳しい。

だが、あと少しだ……と思いたい。

コボルトは全滅して、もう右通路からは出てきていない。

ゴブリンも、ミサキが矢を放つ直前に一体の魔導士が来ただけで途絶えている。

ここにいるのはあと十五体ほどだ。

カエデの活躍で、魔導士からの火炎弾もほとんど飛んでこなくなった。

「マスター――!」

マミが急に悲鳴のような高い声をあげた。

俺が振り返ると、マミは後方を見つめていた。

その視線の先には青いこんもりとした半透明の軟体動物がたくさん湧いている。

「スライムです――!」

マミは、センちゃんを回頭させて、背後に向き直った。

よく見ると俺が最初に落ちた穴からスライムがどんどん湧き出ていた。

あの罠は……こいつらの出現スイッチだったのか!

俺のせいだ――。

パーティーは、前後から挟撃されることになった。

やばい、後衛には防衛手段がないぞ――!

(著作:Jiraiya/ 編集:アヒッル)

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