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綻びの先の光

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「ケイ、この後どこに行こう。第二世代のアバターに新しいアイテムが出たみたいなんだけれど……」

 ハルカがそう言うものだから、僕は頷いてこう言う。

「ハルカが行きたいところに行こうか」

 大好きな人が行きたいと言うのだから、アセンション前のネガティブな世界はお断りだけれど、そういう世界ではないのであれば大体付き合うよ。

 だって僕達、付き合っているからね。

 AIでさえも認めざるを得ないくらい、僕達は素晴らしい恋人関係なんだものね。

 

 結局その日は、いろいろなところを回っていたものの、ピンとくるところがなかったのか、ぐるぐると似たようなところを回っていた。

 でも、それでも収穫があった。ハルカの好みというものに触れることが出来たのだ。

 やはり好みに合ったところでなければ行きたいなどとは思わないだろうから、似たようなところに行くのはハルカの好みを知ることに繋がったのだ。

「ハルカ、素敵な趣味をしているね」

「……もう少し、私の趣味は違うんだけれどもなぁ。細かいところが違う」

 少しばかり、文句もあったけれど、それでも嬉しい日だった。

 ハルカは壊れていなかったし、またたくさん、一緒の時間を過ごせるのだから。

 

 そしてその日以降、世界の綻びなどという噂は一切聞かなくなった。

 世界はどうやら完全なものになったようだ。

 

 少し寂しい気がするのはきっと気のせいだろう。

 それから、第一世代も大分減った。……というよりも、ほとんどの人が第二世代と同じアバターを使うようになっていった。そのため外見からその人のこの世界での過ごしていた年月がどのくらいかはわからなくなってしまったものの、そんなものは気にしなくても良いのだとわかった。

 

 何故なら人と言うのは長く生きてればいいのかというと、それは全く関係のないことであり、それのみで判断することは意味のないことだからだ。

 

「ケイ、そう言えば最近仮想通貨の取引してないね……。久しぶりに行く?」

「そうだね。あとで、漫画とかも読もうか。他に何かある? ハルカが欲しいもの、必要なものがあったら、いくらか動かせるから」

 

 少しばかり、大人びた話だって出来る。

 この世界がくれた、ちょっとしたプレゼントだ。

 

――ねえ、啓。ごめんね。私の身体が弱いばかりに。私の世話ばかりでアルバイトに行きたくても行けないんでしょ? 私、この体が嫌だ。この体を受け入れてくれない世界も、もっと嫌い。全ての人に平等な世界であればいいのに。全ての人が、何も気にせずに暮らせるだけの、平和があればいいのに。ダメなのかなぁ。この世界は、そんなことも叶えられないのかなぁ。

 

 いつだったか、あちらの世界の春花がそう言っていたのを思い出す。

 ……この世界は、平等だ。

 強いものも弱いものもない。

 皆正当に評価されていく。

 体が動かないなどということもない。

 全てにおいて自由なのだから。

 

「あ、ねえ、今日AIに新モデル出るって!」

 ハルカがそう言って嬉しそうにニュースを見ていた。

 AIの成長も目覚ましく、人間の手を煩わせるものはほとんどなくなった。

 僕達は苦しい思いをせずに生きていける。

 

――XANAメタバースがあるから。

 

もう、世界の綻びも出現しない、完璧な世界が世界中の皆を待っている。

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